【イベントレポート】建設業の未来探索 ~人手不足時代に問われる利益創出とデータドリブン組織への変革~

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〇企画趣旨

建設業界ではいま、資材価格の高騰、慢性的な人手不足、技能者の高齢化、工期遵守の厳格化など、現場を取り巻く環境が一段と厳しさを増しています。その影響は現場だけにとどまらず、案件ごとの採算悪化、想定外の原価上昇、要員配置の最適化の難しさ、利益率の低下といった形で、経営そのものに直結しています。

とりわけ経営層にとって重要性を増しているのが、「現場で起きている変化をどれだけ早く経営判断につなげられるか」という点です。しかし実際には、工事進捗、出来高、原価、労務、調達、安全、品質といった重要情報が現場や部門ごとに分散し、案件の異変や収益悪化の兆候を早期に捉えきれないという課題が少なくありません。

こうした状況のなか、いま建設業に求められているのは、現場のデータを単なる記録で終わらせず、経営の意思決定に直結させる「データドリブン経営」への転換です。個別案件の進捗や採算状況をリアルタイムで把握し、どの現場で、どの工程に、どのようなリスクが生じているのかを可視化することは、現場改善にとどまらず、企業全体の利益管理、資源配分、受注戦略の高度化にもつながります。

さらに近年は、AI活用の実装フェーズも現実味を帯びてきました。工期遅延の予兆検知、原価超過リスクの早期把握、施工計画の最適化、設備保全の高度化、ベテラン技術者の判断ノウハウの形式知化など、AIは現場の効率化だけでなく、経営の先読み力を高める手段として注目されています。

本カンファレンスでは、建設現場で日々生まれているデータをいかに経営資産へ転換するかをテーマに、建設業が直面する経営課題とその打ち手を考察した。

■基調講演

建設DXを“現場効率化”だけでは終わらせない
~データ駆動型アプローチによる次世代インフラマネジメントと建設生産システムの構想~

東京大学 大学院工学系研究科
総合研究機構 特任教授
全 邦釘 氏

東京大学工学部土木工学科卒業後、米国・Wayne State Universityにて博士号(Ph.D.)を取得。延世大学での研究員、愛媛大学助教・准教授(地域復興デザイン研究センター長)を経て、東京大学特任准教授、2025年より現職。専門は構造工学、インフラ維持管理、建設DX、AI・データ活用で、橋梁・トンネル等の社会インフラ点検におけるドローン、画像解析、ディープラーニング活用を推進。i-Construction、デジタルツイン、ロボティクスなど建設現場の生産性向上や持続可能なインフラマネジメントに関する研究・社会実装に取り組み、建設業の未来像やAI時代の人材育成についても発信している。

 

米中が主導するAIの時代、日本はどこで勝つべきか?中国はトップダウン・中央集権型であり、地域ごとの細かな環境要因や、住民の合意形成を無視しがちだ。米国はビッグテック主導・市場競争型で、「儲かる都市部」に最適化されがちである。日本の最大の武器は全国の“現場力”。現場で生まれるデータをいかに“判断”に変えるかが重要だ。「現場力×AI」の世界標準を目指すべきではないだろうか。

現状、建設業は3つの構造的圧力に挟まれている。(1)担い手の崩壊(就業者減と高齢化)(2)2024年問題(残業上限規制と労務単価上昇)(3)生産性の低さ、である。インフラなどの老朽化も加速している。

維持管理は“コスト”ではなく、“投資選択”つまり経営判断だ。国の施策=i-ConstructionやBIM/CIM原則化などにより、各企業・組織にデータは“あるのに分散していて使えていない”状態。最大の経営機会損失状態にあると言っていい。
※BIM/CIM=Building Information Modeling/Computer Integrated Manufacturing

先端技術の流れも速い。例えばグーグル・ストリートビューのようなバーチャルツアーシステムとAIを組み合わせれば、構造力学上問題のある橋などの建造物(の状態)を見つけることができる可能性もある。

・多様なデータ取得が重要
・別目的で集めていたデータが役にたつことがありえる
・計測範囲が面的、空間的に広がったので思わぬデータが取れていたりする
・ただし、これまでの方法ではデータから「想定外に」有効な情報を入手することは現実的ではない
・そこで、網羅的に情報を入手、解析する仕組みが必要⇒AI、データプラットフォーム
・新時代のインフラマネジメントへ
ということがわかってくる。

3次元データは2次元データよりも情報が多く、新たなニーズに対応しやすい。昨今は、3次元モデル生成プラットフォームが学術界含め充実してきている。多様なデータを取得し、意味を得る(抽出する)ことが肝要だ。

私は、写真の説明(Image Captioning)による抽象化を行う=画像を言葉に変えるAIを研究開発してきた。抽象化により状況説明ができたら、それを解釈したい。そのために知識が必要なのだ。原因を考えるAIエージェントによる流れもできつつある。

例えば橋梁は個別性が非常に高く、腐食・崩落などの注意喚起水準決定が難しい。そのような状況で役に立つ知見を表現するために、抽象度と具体性のバランスを取った「言語」で状況が説明されている(診断)と考えた。また、その言語をもとに、措置方針も言語で説明されている。つまり「言語」「単語」が状況を完結に規定する主成分になっている、とも考えた。なお、「思考や認識は言葉に規定される」とは言語学の泰斗の言葉である。

LLM(Large language model)に専門的な知見を含む文書を入れれば、的確な判断ができるようになる可能性がある。※ドローン撮影画像を活用する橋梁点検・解析AIのデモンストレーションあり

データが集まれば判断できる。データを一カ所に集め、統合する必要があると考え、インフラOS構想を練っている。画像・図面・点群・文書を、統一API経由で扱える共通基盤を作れば、橋梁などの劣化予測⇒経営判断、方針策定へつなげることができる。

LLMの進化は著しく、東大理科Ⅲ類に合格できる水準まで来ている。AIの画像理解の性能も格段に向上しており、「この部材は耐震ブレース(トラス対傾構)の可能性が高い」のように、画像から異常を読み取れるようになってきている。また、想定される主因や、至急取るべき安全措置などもAIは提示する。

Data/Information/Knowledge/Wisdomの“DIKW”ピラミッドを超速で回すところに価値がある。AIはData⇒informationを促進し、LLMやMCPはInformation⇒Knowledgeを促進する。Wisdomとは単なる事実や知識の羅列ではなく、複雑な現実文脈を踏まえた最適な意思決定であり、「AIと人間の協創」だ。そしてWisdomとその結果は、再びData/Knowledgeとしてシステムにフィードバックされる。

最近ようやく、設計~施工~維持管理を貫く“一本のデータの流れ”ができてきた。I-Constructionなどにより建設生産プロセス全体を3次元データで繋ぐようになり、次世代建設生産システムの姿が見えてきた。

データについては、日本の強みを活かし、守り、勝てるところで価値や一番実質的な利益を得ることを考えるべきである。汎用AIでは米国や中国には勝てない。ただし、一つの文化内・集団内に閉じたAIを作ることは有用だ。例えば、各担当者の業務から得られるデータや操作履歴を蓄積し、それをもとに学習することで強みが出てくるのでは。「利活用と技術革新の好循環」を進めるにはどうすればよいかを考えたい。使えば使うほど賢くなっていく仕組みが重要だ。

先述のように、中国はトップダウン・中央集権型。米国はビッグテック主導・市場競争型。日本は分散協調・ボトムアップの現場力型。で、そこに勝ち筋がある。

「インフラ格差」の解消(底上げ)/「業務=AIの学習」という究極の持続可能性/課題先進国モデルの海外輸出──。こうした単なる「作業の効率化」を超えたAIによるメリットにより、日本は「現場力×AI」の世界標準となることができると考える。

<結言>
・人は減り、インフラは老い、コストは上がる
・それでも(それゆえに?)データを経営の意思決定に変えられる会社が競争力を持つ
・現場効率化で終わらせない。現場のデータを経営の羅針盤にしないといけない
・インフラは基盤であるべき、しかしボトルネックにはなってはいけない
・日本あるいは日本の特定の分野、あるいは日本の特定の分野の特定の企業/組織/個人が世界の最先端

■課題解決講演

建設現場の“今”を、経営判断へつなぐ
~経営意思決定・アクションを加速するデータ+AI活用の実践アプローチ~

ドーモ株式会社
シニアアカウントエグゼクティブ
平井 孝明 氏

ドーモ株式会社
シニアソリューションエンジニア
秋吉 範隆 氏

◎What is Domo? Why Domo?/お客様事例の紹介(平井氏による講演)

全社的にデータ活用に取り組む企業は増えている。しかし、最新のテクノロジーやツールを導入しても、企業体質・人材・組織の変革ができていないために失敗する例は多い。世界における日本企業の競争力は、ビッグデータやデータ分析の活用/俊敏な意思決定・実行/デジタル技術スキル/機会と脅威に即応できる組織体制という項目では、残念ながら世界で最下位水準にある(IMDの2022年の調査による)。

社内の誰もが利用できる使いやすいツール/ビジネス課題を解決するデータ思考人材/自走する組織づくり、この三位一体が必要だ。「いつでも どこでも 誰でも どのデバイスでもビジネスの『今』を知る」ことができる、人とデータと知見をアクションに繋ぐDomo。圧倒的に使いやすい“AI Agentic Platform”を標榜している。

多くの企業は、日々の業務で発生する多くの課題に直面している。如何に迅速に、効率的にその課題を解決できるか、が重要だ。すべてのデータを集め、理解するには時間・ノウハウ・リソースが必要。データ活用のオールインワンプラットフォームがDomo。その強みは下記スライドを参照。

先の講演にもあったが、市場規模約81兆円の建設業界は、(1)人手不足・高齢化(2)2024年問題(時間外労働規制)(3)DX遅れ(アナログ中心)の三重苦の現実にある。建設DX=BIM/AIなどのトレンドは整いつつあるが、BIMを導入しただけ/現場が入力しない/ダッシュボードだけつくる、といった「入れるだけでの失敗」が多く見受けられる。DX成功の本質は「データを活用して行動を変えること」だ。現場の巻き込みとデータ活用が成否を分ける。

「目的⇒現場⇒データ⇒行動⇒成果」のサイクルで回せば、現場・経営・社会に定量的な価値が生まれる。DXはゴールではなく、小さく始めて結果を出し、全社へ広げていきたい。人・プロセス・データ・仕組みのかけ算が鍵だ。

例えばA社はDomoを段階的な展開で全社標準化し、役員がリアルタイムで経営データを確認できる体制とした。結果、バラバラだったデータが統合され、現場も役員も同じ数字で動けるようになった。

B社は現場の発破の熟練ノウハウやデータをDomo AIで統合し知的資産に変え、経営の意思決定データとした。C社はERP・工事台帳・会計・工程を一元統合し、利益悪化要因を解析。赤字を施工中に発見・対処できる体制とした。完工後に知るのではなく、施工中に利益を動かせる経営、それが次世代の建設経営モデルである。

今挙げた事例=全社データ経営基盤/施工データの企業資産化/施工中の利益管理は有用である。建設業はまだデータを活かしきれていない。AIを活用するためにも“AI Ready”な環境をいかに整えられているか?が、今後の重要なポイントとなる。

◎Domoで実現する建設DXソリューション(秋吉氏による講演)

データとAIで意思決定からアクションまでを加速するのがDomo。現場・本社・経営をリアルタイムにつなぎ、成果につながるアクションを実現する。Domoでは工程管理/安全管理/経営の各ダッシュボードが参照できる。(1)データをつなぐ(2)リアルタイムに可視化(3)AIで状況を理解(4)意思決定とアクション(5)成果創出、というフローが作れる。

創出される価値は、安全性向上/生産性向上/工期短縮/利益率向上/データドリブン経営、である。※PC画面を投影しての、現場日報入力/経営サマリー(建設経営)ダッシュボードなどのデモンストレーションあり。

Domoにはわずか3分でアプリが作れる“App Catalyst”機能がある。ノーコードの自然言語でビジネスアプリの作成が可能なのだ。※アプリ作成デモンストレーションあり

Domoで現場の情報をリアルタイムに共有し、データドリブン経営の実現とAIの本格活用を目指していただきたい。

■特別講演(1)

AI・DXで切り拓く、人が輝く建設現場
~「人が主役」として輝く建設職場へのチャレンジ~

株式会社鴻池組
常務執行役員 経営戦略本部長 兼 デジタル戦略室長
深澤 卓司 氏

(株)鴻池組 常務執行役員 経営戦略本部長兼デジタル戦略室長。国内外の建築工事経験、東西副所管長として建築全般管理、本社経営戦略本部長として経営戦略業務に従事。40年の経験からデジタル利活用による最前線業務の効率化に向けたデジタル戦略室を設立し、推進。同業他社との「建設RXコンソーシアム」に設立当初から参画

弊社の経営理念は「社会と共に『豊かな地球』と『輝く未来』を築きます」。長期ビジョンは「『幸せ』をつくる、支える、共にする」である。

直面している課題としては、外的要因では少子高齢化や異常気象。内的要因では、コスト・納期、技術の継承、などが挙げられる。AI/DXは目的ではなく手段として取り組んでいる。企画提案⇒設計⇒積算見積⇒施工計画⇒施工⇒アフターサービス⇒企画提案という業務フローを回しつつ、働く人の幸せと企業の持続的成長を目指す。AIはそのための手段だ。

2022年にデジタル戦略室を設立(当時6名)。現在は、経営層が参画するデジタル推進委員会の方針に基づき、建築、土木、管理の3総括本部とデジタル戦略室が連携し、全部門領域で推進している。AI/DXが変える建設現場の未来像としては、(1)自動化による徹底的な省力化(2)「人間回帰」のクリエイティブな時間(3)人材育成と現場の幸福度向上、がある。(1)~(3)によって魅力ある建設業界にしたい。

土木の具体的事例としては、四足歩行ロボットが過酷な環境を代行することで、人を危険から遠ざけ、安全な現場を実現している。鴻池組ロボットパークや大阪万博施工現場での実証実験を通じて、不整地走破や自律巡視、酷暑環境、トンネル工事の危険エリア調査などの作業現場が厳しい施工場面で活用されている。

Reライニング工法は、社会インフラを止めずに更新する技術革新により、持続可能な社会基盤を支える。一般車の通行を確保したまま高速施工を可能にする、早期強度コンクリートと新工法による工期短縮とコスト削減がかなう。

建築の具体的事例では、クレーン自動運転システムがある。3D LiDAR※とデジタルツインを活用し、熟練の技をデジタルで継承・自動化し、建設業界への若手入職者の負担を軽減している。人手不足解消や安全性向上にも寄与している。
※LiDAR=レーザー光を使って周囲の物体までの距離を測定するセンサー技術

全社の事例としては、歴史と技術を未来へつなぐ「デジタルツイン」がある。国登録有形文化財である弊社の「旧本店」「ヒストリーラボ」をメタバース化。企業の歴史・技術・企業文化(無形資産)をデジタルアーカイブ化し、次世代へ継承する。実在する建築物をバーチャル上に精密再現しており、弊社の歴史と未来をつなぐ新たな空間体験ができる。

もう一つの全社事例が、AI-こうちゃん(社内構築 対話型生成AI)。入力データが学習されないセキュアな環境で運用されており、チャット形式での相談・質問に対し、登録した社内文書に基づく回答を生成している。全役職員へのe-ラーニング受講を必須化し、安全運用に取り組んでいる。

これらの他、工事車両運行・安全管理を支援するシステム/2人作業の解消、省力化ロボット/若手技術者による適切な地山評価を補助するシステムもあり、ITパスポート取得も推奨・促進している。

弊社がDXを進めることができているのは、(1)目的の明確化(2)トップのコミットメント(3)社員の自分ごと化、があるからと考える。そして、社内データの見える化は、データドリブン経営を実現する。

AI/DX時代だからこそ、「人が主役」の建設業へ。「現場ってかっこいい」と次世代に憧れられる建設業にしたい。もちろんAI/DXだけではそれは実現できない。変形労働制の採用や熱中症対策、SNSの活用や、建設労働者の意見の集約・反映なども含め、できることから進めていきたい。

■特別講演(2)

次世代建設の現在地と未来
~DX・AI・ロボティクスが変える建設現場の進化と実装可能性~

株式会社建設ITワールド 代表取締役
建設ITジャーナリスト
家入 龍太 氏

BIM/CIMやロボット、AIなどの導入により、生産性向上、地球環境保全、国際化といった建設業が抱える経営課題を解決するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。新しいことへのチャレンジを「ほめて伸ばす」のがモットー。公式サイト「建設ITワールド」を中心に積極的に情報発信を行っている。「年中無休・24時間受付」の精神で、建設・IT・経営に関する記事の執筆や講演、コンサルティングなどを行っている。

1990年代をピークに「生産年齢人口」は減少の一途だ。建設業の課題も人手不足で、「何でも人に依存」からの脱却が求められている。ロボットやAIに仕事をさせ、徹底的にムダを省くとともに、補助器具などによって人間の能力を拡張する「超人化」を進め、労働生産性を高めなければならない。

人間の労働時間を短縮するには、徹底的に「移動のムダ」を省き、生産時間に充てることだ。肉体的雑用はロボットに、頭脳的雑用はAIに任せ、最終仕上げや意思決定は人間に委ねる。AI・ロボット時代の新「7つの実装シナリオ」は、以下の通りだ。

どこでも仕事ができる「クラウド化」/作る前に失敗をつぶす「BIMデータ化」/現場に行かずに確認する「リモート化」/頭脳的な雑用を任せる「AI子分化」/肉体的な雑用を任せる「ロボット子分化」/人の力を底上げする「超人化」/雑用を切り出す「仕事の分業化」。

例えば、クラウドとタブレットで夜の作業を昼間にシフトする。これまで現場事務所で夜に行っていた書類作成や工事写真整理、帳票作成などを昼間、現場にいる時間に処理できるアプリがある。業種や工種に合ったものを選びたい。また、デジタルツインで“バーチャル完成”してから現場で着工するツールもある。最適なICT施工用データも提供してくれる。

360度カメラ映像を共有することで、住宅現場などをリモート施工管理(品質検査・安全管理)するツールや、衛星通信=Starlink利用で1つの操作席で2台を操作する重機遠隔操作システムもある。

現場との通話をAIが報告書や議事録にする機能を持つリモート管理ツールは、会話のテキスト起こしと同時に映像もキャプチャし紐付けて記録する。現場を自走しながら、高速で墨出しを行える機器は、インクジェットプリンターのメーカーが開発した。人間の運搬力を補助モーターでパワフルにする「ねこ車電動化キット」もある。

現場業務のうち、「バックオフィス的業務」を切り出し、建設ディレクターに任せることで、現場技術者の負担が大幅に減る。積算・入札、工事書類作成、写真測量、3次元設計などがアウトソースできる。

生成AI「ChatGPT」は、例えば以下のことができる。各種工事の施工手順書、安全注意点、チェックリスト作成/代替案の作成/周辺住民からの苦情予測/補助金申請書の文章作成。ChatGPTが出してきたこれらの案を人間が確認、選択、仕上げをすると効率がいい。

従来、施工管理を自動化するにはBIMモデルや点群データを用意する必要があり、その作成に手間と時間がかかっていた。しかし、これからは2D+生成AIが施工管理の自動化を担う。以下のメリットがある。(1)手元のデータから始められる(2)BIMの壁をAIが下げる(3)後発企業にも逆転のチャンス。

その理由は、クラウドサービスから始められる/AIが操作や作成を補助してくれる/図面・写真・点群から自動作成/BPOなど外部基盤を使う、など。これからのBIM/CIMは、AIを組み合わせていかに早く業務に使うかで差がつく時代となる。AIが図面を30秒で“建築写真”に変換するAIレンダラーや、AIチャットでBIMやパースを作成する対話型3D建築デザインツールも登場している。

AIがPDF図面を構造BIMモデルに変換するアプリや、先述した360度カメラとAIで施工管理を自動化するツールは大きく進化し、実際の現場でも使われ始めている。見積書や図面などの案件情報から工程表を自動作成するツールもある。手作業による入力がほぼ不要になってきており、中小建設会社のバックオフィス業務はAIアプリで自動化できる時代になった。

最後に全員参加型DXの実装ロードマップを示す(スライド参照)。今日は戦術の部分を詳述したが、戦略(労働理念)と管理(KPIで実効性を確認)の部分も大変重要であることに留意されたい。

2026年6月29日(月) 開催

source : 文藝春秋 メディア事業局