大勝負に出たセブン&アイ、西武の先行きを危ぶむ声、牛丼の吉野家は大健闘だが、家電量販店と銀行の融合

丸の内コンフィデンシャル

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日本の経済の中心地、東京・丸の内。敏腕経済記者たちが“マル秘”財界情報を覆面で執筆する。

★大勝負に出たセブン&アイ

 コンビニ最大手「セブン-イレブン」を傘下とする、セブン&アイ・ホールディングス(井阪隆一代表取締役社長)が「乾坤一擲の大勝負」(関係者)に打って出る。流通業界で過去最大級となる210億ドルの巨費を投じて北米3位のコンビニチェーンの買収に踏み切るのだ。

 買収するのは米国石油精製会社、マラソン・ペトロリアムが「スピードウェイ」のブランドで手掛けるリテール事業。北米でコンビニ併設型ガソリンスタンド約3900店を運営、売上高は19年12月期で2.76兆円規模だ。

 米セブン-イレブンが北米で展開する店舗数は約9800店。スピードウェイが手に入れば、総店舗数は一気に拡大。約5900店で2位のアリメンテーション・カウチタードに倍以上の差をつけて首位の座が「盤石」(幹部)となる。21年前半までに買収手続きを完了させ、3年後で最低でも500億円を目標に相乗効果を追求する考えだ。

 だが、スピードウェイの売上高の約7割はガソリンをはじめとする燃料油が占める。セブン&アイでは「ガソリンを入れることを主目的とした米国のコンビニの価値を変えたい」(井阪社長)としているが、市場では「買収で抱え込むのれんの償却負担だけで毎期500億円規模にのぼる」といった予測もあり、どこまでシナジーを引き出せるか首を傾げる向きも少なくない。

 買収資金の大半を借り入れ調達するため財務の劣化も気懸かりだ。セブン&アイの有利子負債は5月末時点で1.21兆円。仮にすべてを借金で賄えば、これが3.4兆円超に膨れ上がり、現預金を差っ引いたネットキャッシュは1.8兆円強のマイナスに転落する。「新規投資を進めていく上での大きな足枷になりかねない」(大手証券幹部)。

 機関投資家らの間では「この際『デニーズ』など専門店事業も切り離し、売却資金を借金返済の原資に充てるべき」といった声も飛び交う。

★西武の先行きを危ぶむ声

 新型コロナウイルスの感染拡大で鉄道大手が大打撃を受けている。20年4~6月期の連結決算では18社全てが最終赤字に陥った。

 乗客数が減ったことで、業績が悪化したように見えるが、実は各社を苦しめているのはホテルなどの関連事業。このためホテル・レジャー事業が売上高の4割と高い比率を占める西武ホールディングス(HD、後藤高志社長)の先行きを危ぶむ声が広がっている。

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source : 文藝春秋 2020年10月号

genre : ニュース 経済 企業