日本の経済の中心地、東京・丸の内。敏腕経済記者たちが“マル秘”財界情報を覆面で執筆する。
★キリンがビール業界首位!?
ビール大手4社の今年上半期(1〜6月)のビール類「推定」シェアで、キリンビール(布施孝之社長)がアサヒビール(塩澤賢一社長)を抜き11年ぶりに首位に立ったもようだ。
コロナ禍でビール系飲料市場に大きな変化が起き、外出自粛や飲食店の休業でビールの売り上げが落ち、割安な第3のビールを自宅で飲む人が増えたことが影響した。
ビール大手4社が発表したビール系飲料の上半期の販売実績によると、全体の販売量に占めるビールのシェアは38%、対する第3のビールは49%。04年に第3のビールが登場して以来、初めてビールを上回った。
アサヒは87年に、日本初の辛口ビール「スーパードライ」を発売以降、スーパードライに注力する戦略をとり、ビールの国内シェアを伸ばしてきた。居酒屋など飲食店向けビールで圧倒的な強さを誇る。しかしアサヒはドライ頼みのツケが、コロナで回ってきた。「スーパードライ」の今年上半期の販売実績は前年同期比26%減と大きく落ち込んだからだ。一方、家庭用の比率が高いキリンは巣ごもり消費に乗った。第3のビール「本麒麟」が昨年上半期に比べて約4割伸び、首位奪還の原動力となった。
今後はどうなるのか。ポイントは10月の酒税法の改正だ。ビールの酒税は350mlあたり77円だが、この改正で7円下がる一方、第3のビールは税額が9.8円上がる。ビールと第3のビールの価格差が縮まる。
キリンの布施社長は7月9日の記者会見で引き続き「第3」の販売に力を入れるとした。一方アサヒは3月に第3のビール「アサヒ ザ・リッチ」を投入し巻き返しを図っている。「足元で業務用ビールの需要が回復してきており、酒税法改正を見据えた販促を強化する」(関係者)。果たして、来期勝利の美酒に酔うのは!?
★オープンハウスの急成長
新興不動産会社のオープンハウス(荒井正昭社長)が国内外の資本市場で約440億円の資金を調達した。ほぼ国内展開だけの会社が海外市場でも資本の吸い上げに成功したのはそれだけ急成長ぶりが注目されているからだ。
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source : 文藝春秋 2020年9月号