中国版「失われた30年」が始まった

中国が陥ったマイナスの連鎖

高口 康太 ジャーナリスト

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いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。

 中国経済の低迷が続いている。新型コロナウイルスの流行と各地のロックダウン、不動産市場の低迷、消費の伸びの減速、将来への悲観から投資が減速、デフレに突入……2020年代の中国はトラブル続きで、しかもまだ底が見えていない。このほころびの原因はどこにあるのか?

 2025年は深刻さが浮き彫りとなった一年だった。前年9月の中国共産党中央政治局会議では「困難を正視し、信頼を堅持し、経済政策への責任感と緊迫感を高めなければならない」と、経済低迷を認める文言が盛り込まれ、財政、不動産対策、消費など各方面で怒濤の景気対策へとつながった。財政では5年で10兆元(約200兆円)の借換債を発行、地方政府の隠れ債務を処理する。不動産対策では売れ残った住宅を地方政府が買い取り、低所得者向け住宅として転用する。また、既存の住宅ローン金利を引き下げという救済策もある。消費では自動車からスマートフォンまで幅広い品目への買い換え補助金支給が実施されたほか、消費者金融の金利引き下げまで実施された。

画像はイメージです ©Faustostock/イメージマート

 加えて、給付という異例の景気対策も打ち出された。中国共産党は国民への給付には及び腰だ。わかりやすい例がコロナ禍である。日本の特別定額給付金しかり、多くの国々で所得保障が実施されたが中国は例外だ。自助努力で乗り切れという、しばき主義がにじみでる。ところが奨学金や高齢者支援、子ども手当など受給者を限定した方式とはいえ、給付型の対策を拡大している点は注目される。

 だが、その成果は思わしくない。不動産市場は今なお下落が続いている。ピークからでは大都市で2~3割、地方都市だとそれ以上の下落とみられる。中国人は資産の約7割を住宅として保有していただけに、資産の目減りは消費マインドを悪化させ、消費行動にも影響を与えている。その代表例が「平替」(安い商品への切り換え)だ。朝のコーヒーを米スターバックスから中国ブランドに切り換えるといった動きが広がっている。日本のアウトドアブランド「モンベル」が中国で大人気だが、これもより高級な「アークテリクス」の代替品という文脈だ。明日の食事に困るほどに困窮しているわけではないが、じりじりと追い込まれていく。その姿は「失われた30年」の日本と重なる。

 消費者の財布のひもが固くなり、需給のバランスが崩れて供給過剰となれば何が起きるのか。そう、デフレだ。23年第24半期以降、物価の基調を表すGDPデフレーターはマイナスが続く。日本が長いデフレトレンドから脱したタイミングで、入れ替わるように中国がデフレに突入している。

 デフレ下では企業は投資と雇用の拡大に慎重になる。採用がしぼられた結果、若年失業率は前年からさらに悪化。大学を卒業しても望ましい職が見つからず、フードデリバリーなどで食いつなぎながら職探しを続ける人も多い。あるいは民間での就職をあきらめ、公務員試験に望みをかけるトレンドも生まれた。国家公務員試験の受験申込者数は24年の採用試験で史上初めて300万人の大台を記録した。この2年前に初の200万人突破が話題になったばかりだというのに、2年間で100万人も増えている。

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source : ノンフィクション出版 2026年の論点

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