いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。
自動車産業では2016年以来、通信(Connected)、自動運転(Autonomous)、所有形態の変化(Shared & Services)、電動化(Electric)の頭文字をとった「CASE」という言葉が語られてきた。これは「100年に一度の変革期」と言われる自動車産業において主に技術革新の文脈で用いられてきたわけだが、それから10年が経とうとする現在、含意される内容は大きく変わっている。米中対立や経済安全保障といった地経学的な課題と一体化した複雑な方程式になったのだ。
変革の柱の一つと目されていたのが、電動車(EV)だ。競争力、市場規模の面でも、EVを巡る諸状況の中心には中国がいる。2025年のEVの世界販売台数は約2200万台に達すると予想されているが、そのうち3分の2を中国のEVメーカーが占める見通しとなっている。また、国内における新車販売の約50%がEVとなっており、世界最大のEV市場を有している。

ただ、そこでは様々な問題が噴出している。中国企業は過剰生産能力を抱え、輸出と海外での工場建設を加速させている。海外での工場新設は輸出を減らすため、結果的に中国国内における過剰生産を悪化させる。共産国らしく、生産目標ありきの中国はこの矛盾に無頓着だ。
中国国内では、政府が是正に乗り出すほどの過剰な値引き競争が横行している。EVは日本では高価格のイメージだが、中国では登録費用なども含め「安い」クルマだと受け止められている。2025年9月には、中国の上場自動車企業16社の上半期の純利益合計(約8200億円)が、トヨタの第1四半期の純利益(約8400億円)を下回ったと報じられていたことが、その消耗戦の激しさを物語っている。
日本企業は難しい舵取りを迫られている。ある関係者によれば、中国企業の脅威は、ソフトやAI、ハード面の技術力よりも、コストにあるという。切り詰めた差別的な人件費や猛烈な働き方など、日本企業は中国企業の慣行を真似できない。中国で販売する日本車のバッテリーなどを、中国のサプライヤーから調達する「日本離れ」も起きている。それでもなお「中国市場で伍しておかないと今後グローバルにどこへ行っても中国企業に太刀打ちできなくなる」との決意が滲む。
地経学研究所による経済安全保障100社アンケートでは、直近2年連続で日本企業にとっての「中国市場での最大の焦点」が「R&D(研究開発)」となった。2026年にはトヨタなど複数社が、EVのバッテリーとして現在主流のリチウムイオン電池に代わり、全固体電池の順次投入を予告している。温度変化に強く、充電時間の短縮と航続距離の延長、発火リスク低減に期待がかかる。
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source : ノンフィクション出版 2026年の論点

