繋がりと分断

巻頭随筆

ニュース 社会 読書

 コロナで生活は変わりましたか? とインタビューなどでよく質問を受ける。あまりピンとこず、「大して変わってないです」と答えてきたし、実際、中学に入学したばかりなのに3ヶ月近く学校に通えなかった長女や、入社早々研修が飛び、在宅勤務と休業を織り交ぜながらのイレギュラーな社会人生活をスタートさせた新入社員の友人、大学の前期の授業がすべてオンラインになり、決まっていた講演会が全て中止になった父などと比べると、インタビューがオンラインになったり、受賞した文学賞の授賞式が中止になったりなどの影響はあったものの、メイン業務が家でパソコンに向かうことである小説家にはさほどの変化はなかったと言えるだろう。

 しかし仕事という観点から離れて見ると、変化は様々なところに現れる。チケットを取っていたライブやフェスが次々中止になり、親しい友達らが「旦那が社長秘書だからどうしても罹れなくて飲みにいけない」「子供が喘息持ちだからどうしても罹れなくて飲みにいけない」などあらゆる事情で飲みに行けなくなり、夏休みなどに会っていた地方やフランスの友人とも今年は会えなかった。必然的に、もともと付き合いの狭い私が会うのは「会社のガイドラインがそこまで厳しくない出版社の編集者」と「罹ったら罹ったで仕方ない、と割り切っている友達」のみになる。

 そうなると、メールやLINEのやり取りも一種の体験ではあるものの、どうしても人と直接会って話すインパクトには及ばないため、「割とみんな緩いな」という印象を抱いてしまう。自分と近い考え方の人の声が大きく聞こえてきて、それ以外の声が聞こえにくい、受け取りにくい状況に陥っていることを長引くコロナ禍で痛感することが増えた。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2020年12月号

genre : ニュース 社会 読書