五輪女王を破った16歳のニューヒロイン誕生秘話
平成最後の日本一決定戦となった2018年12月の全日本フィギュアスケート選手権。そのフリーの冒頭で、飛距離のあるパワフルな2本のトリプルアクセルを決めた。154㎝の小柄な身体が、大きく羽ばたくようにリンクを舞う。フリーで155.01点の首位となり、ショート5位から大逆転の銀メダル、そして世界選手権への切符をつかんだ。
「フリーの前は不安でしたが、頭をフル回転させて気持ちをポジティブに持っていきました。今日は自分の100%の力が出せました」
日本のお家芸とも言われるフィギュアスケート。荒川静香のトリノ五輪金メダルから始まり、浅田真央、髙橋大輔、羽生結弦、宇野昌磨らが4大会連続で花形競技のメダルを繋いできた。そして次なる北京五輪へのバトンを受け継ごうとしているのが関西出身の16歳、紀平梨花だ。昨年12月には、グランプリファイナルで平昌五輪女王のアリーナ・ザギトワをくだし、世界タイトルを手にした。
そして何より注目を集めているのは、女子にとって超大技のトリプルアクセルだ。すでに13歳の頃から跳んでいるが、今季はその精度が高まり、世界のライバルを脅かす武器になった。しかも成功の秘訣は「調子の悪い日には練習を我慢して、よく自分の身体と向き合って、質の良い練習だけをします」という。質より量を尊ぶ傾向のある日本のスポーツ界に、一石を投じる発言である。16歳にしてこの冷静さはどこで養われたのか。ヒロイン誕生を紐解く。
何でも1番になろう
生まれは兵庫県西宮市。4歳上の姉と、会社員の両親という家庭に育った。小さい頃から姉に追い付こうと何でも頑張るタイプ。やる気を存分に生かせる教育を考えた両親が、市内にある広田幼稚園を探し当てた。ここではヨコミネ式教育法と呼ばれる早期教育を導入したばかりで、紀平はその2歳児クラスの第1期生として入園した。岸圭一園長(現理事長)は語る。
「人間は6歳までに、脳の9割が完成し、運動神経の95%が養われると言われています。子ども達の才能を早い段階から伸ばして将来に役立つ基礎力を養おうと思い、それまでの自由保育の方針から、早期教育に取り組んだ初年度でした」
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source : 文藝春秋 2019年2月号