楽天が試される「売る力」、コロナ不況で暗闘勃発、麻生一族企業の爆買い、高過ぎたプライドの代償

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★楽天が試される「売る力」

 楽天(三木谷浩史会長兼社長)と米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR、ヘンリー・クラビス共同CEO)は、11月16日、大手スーパー西友(リオネル・デスクリー社長兼CEO)に85%出資すると発表した。KKRが65%、楽天が20%の株式を取得。西友の親会社は世界最大のスーパーであるウォルマート・インク(ダグ・マクミロンCEO)からKKRに代わる。

 今回の株式取得に当たって、西友の企業価値は1725億円(約16億ドル)とした。ここから単純計算すると楽天は西友の株式取得に345億円を投じることになる。

 21年1月に新設する子会社「楽天DXソリューション」(東京・世田谷区)を通じて西友の株式を取得。楽天DXソリューションは西友に対してもDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を行う。AI(人工知能)による需要予測を活用した在庫管理や価格設定の最適化、スマートフォンなどによるレジなし決済の導入などを予定する。

 楽天が持つ1億人以上の会員基盤やテクノロジーを活用して西友のDXを推進するとの触れ込みだが、前途は平坦ではない。西友の年商は7000億円規模だが、ウォルマートの日本法人の19年12月期決算の純利益が4700万円だったことから分かるように利益はほとんど出ていない。

 すでに楽天は18年からウォルマートと日本のEC(電子商取引)事業で提携し、西友とネットスーパー事業を始めている。今後は300を超える西友の実店舗と連携し、ネットとリアル店舗との融合に乗り出す。だが楽天の経営陣には、実店舗を運営できるノウハウを持った人材がおらず、ネットとリアル店舗の融合は「本格参入した携帯電話事業よりも難しいかもしれない」(経済アナリスト)。

 西友の現有スタッフを活性化して、売る力を取り戻さなければならないからだ。すでに西友の実店舗では、ウォルマートから派遣された経営陣と営業の間で意識の乖離が起きている。そして経営陣と現場の一体感の醸成はどんな経営改革よりも難しい。

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三木谷氏

★コロナ不況で暗闘勃発

 ANAホールディングス(HD、片野坂真哉社長)が11月27日、公募増資などで最大3321億円を調達すると発表した。同社はコロナの感染拡大で急激に業績が悪化。10月末の決算発表会で2021年3月期の連結最終損益は過去最悪となる5100億円の赤字見通しを明らかにしていた。

 また冬のボーナスゼロ、保有機の約1割にあたる35機を削減などの構造改革策も発表している。これにより今年度は1500億円、来年度は2500億円の経費削減を見込むが、片野坂社長の「強靱な企業グループに生まれ変わる」という発言を額面通り受け取る人はいない。「公的支援が不可欠になる」が社内外の共通認識だ。

 ANAHDは日本航空(赤坂祐二社長)が2010年に経営破綻した際、「公的支援を受けるのはおかしい」と口撃。それが奏功し、羽田空港の国際線発着枠獲得で優遇を受けた経緯がある。このため「片野坂さんは今さら公的支援を口にできない」(ANAHD幹部)という。

 日航の逆襲も受けている。同社は11月6日、公募増資などで最大1680億円を調達すると発表した。

 日航の9月末時点の手元資金は3466億円、加えて3000億円の融資枠を残している。7~9月の現金流出額は月150億~200億円。当面の資金繰りに問題はない。

 9月末時点の有利子負債は5011億円で、約1兆3000億円のANAHDの半分以下。自己資本比率も43.6%とANAHDの32.3%を上回る。それでも株主に迷惑をかけてまで公募増資に踏み切った動機は、「ANA憎し」(日航幹部)と見る向きも多い。

 引き受ける投資家は株式を保有する上でポートフォリオを考える。業界ごとに上限があり、「日航株もANAHD株も」というわけにはいかず、ANAHDの資金調達は難航するとみられる。

 業界幹部曰く、「片野坂さんは口は災いの元と痛感していることだろう」。

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片野坂氏

★麻生一族企業の爆買い

 九州の有力企業、麻生(麻生巖社長)が上場企業への投資を加速している。ここにきて打った手は東京・豊洲市場の大手卸売、東都水産(江原恒社長)に対する株式公開買い付け(TOB)。約180億円の枠を設定し、子会社化も視野に買えるだけの株を買い集めようとの方針だ。

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source : 文藝春秋 2021年1月号

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