NiziU 日本芸能界に来た「黒船」

2021年日本を動かす21人

エンタメ 音楽
日本のソニー・ミュージックと韓国の芸能プロダクション、JYPエンターテインメントが組んで誕生したガールズグループ『NiziU(ニジュー)』。2020年12月の本格デビューの前にプレデビュー曲をネットなどで公開したところ、YouTubeでの再生回数は約1.8億に達した。この爆発的な人気を、自身もアーティストであり、音楽プロデューサーでもある『NONA REEVES』の西寺郷太氏が分析する。
西寺郷太(NOONA REEVES)
 
西寺氏(ミュージシャン・NONA REEVES)

「会いたいと思っても簡単に会いにゆけない」

 NiziUがデビュー前のタイミングから老若男女幅広い世代に認知され、愛されたのは、「コロナ」という2020年のエンタテインメント界のみならず、社会全体を襲ったピンチを最大のアドバンテージに変えたことが大きいと思います。

 コロナ禍で世界中が自粛して、人がネットやテレビでしか繋がれない、抑圧された日々。ステイホームで子供たちが登校も出来ない、という空洞のようなタイミング。まさにその時、NiziUのメンバーを選抜するオーディションの様子が地上波テレビ放映と有料チャンネル、SNS、ネットの相乗効果をもたらしながらリアルタイムで届きました。

 2019年7月から札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、沖縄とハワイ、LAの計10箇所で地域予選オーディションが行われ1万人以上の応募の中から選ばれた合格者が、4泊5日の東京合宿に。最終選考に選ばれた14人が、デビュー準備のため韓国に渡って合宿生活を送り始めたのは2019年12月のこと。そこから10カ月……。握手会やサイン会、ライヴ、フェスを含むイベントでフィジカル(CD)やグッズを売り、写真を一緒に撮影するなど「直接の接触」こそがアイドルの人気や運営の収入を下支えしてきた近年の日本アイドル業界。パンデミックの中、その真逆を行ったNiziUだけが「会いたいと思っても簡単に会いにゆけない」極限の状態を味方につけ、神秘性を帯びることに成功したというわけです。

 実は今、僕がこの文章を書いているのは11月末日で、デビュー・シングル『Step and a step』のミュージック・ビデオは公開されてはいるものの、12月2日のデビュー日、CD発売日を迎えてすらいない状況。ただすでに発表され大ヒットしているプレデビュー曲『Make you happy』、そして特に今回届けられた『Step and a step』の歌詞、メロディ、サウンド、ミックス、映像、ダンスを浴びて、プロ音楽家、プロデューサーとしても、一リスナーとしてもその高いクオリティに心から感動してしまいました。これからは日本の芸能事務所もレコード会社も彼女たちを研究し、一斉に真似るはず。今年AKB48が『紅白歌合戦』から外れ、NiziUが初参加することも、流れの変化の象徴だと思います。

要クレジット NiziU
 
NiziU(グローバル・ガールズグループ)
ⒸSony Music Labels Inc./JYP Entertainment.

J・Y・パークの凄さ

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source : 文藝春秋 2021年1月号

genre : エンタメ 音楽