2度目の緊急事態宣言。飲食業界の坂本龍馬がいたらよかった

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2度目の緊急事態宣言の発出からまもなく2週間。渋谷のワインバー「bar bossa」の店主・林伸次さんは、1度目の緊急事態宣言が出た昨年4月に「ひとこと『補償する』と言ってくれれば」を寄稿しました。飲食業界を襲った“2度目の危機”を林さんはどう見ているのでしょうか。

◆文・林伸次(はやし しんじ)
1969年生まれ。徳島県出身。渋谷のワインバー「bar bossa(バールボッサ)」店主。
note:bar_bossa
Twitter:@bar_bossa
Facebookページ:Bar Bossa
ホームページ:http://www.barbossa.com/

固定電話から「今、営業していますか?」

 営業の電話がかかってくるのって、本当に嫌ですよね。最近は向こうもなんとかして電話を切らせないようにと、「以前もご連絡した」とか「電気料金が安くなるので」とか色々とこっちが引っかかる言葉をなげてきます。一度、金曜日の夜のすごく忙しいときに「私と一緒に飲食店経営のことを考えませんか?」って言われて、「金曜日の忙しい時間にかけてくる人とは考えたくありません」と答えそうになりました。

 さらに腹が立つのが「はい。bar bossaです」ってこちらが出たら、「しばらく無音」が続き、「通話ボタンを押したような気配」があって、それでやっと「もしもし、こちら○○コミュニケーションと申しますが」と言い始めるパターンです。

 想像するに、電話帳か電話番号が入力されたデータがあって、それを入力して、もちろん電話に出ない番号もあるから、相手が「ガチャッ」と出てから、「あ、出た」と思って、通話ボタンを押しているのでしょう。

 ところで、コロナで営業時間短縮要請が東京都から出てから、営業終了後に、「今、営業していますか?」っていう電話がかかってくるんですね。

 最近は、「電話をかけるのは相手に迷惑」という風潮があったり、「予約もネットを介して誰とも話さずにしたい」という人も増えているので、「電話で営業しているかどうかの確認」ってめったにないんです。まあ普通は、うちのお店のSNSを検索してチェックしてくれるんです。

 もちろん、携帯電話にうちの電話番号を入力していて、「やってますか?」ってかけてくる古いタイプの方も少しはいます。でもそういう方ってほとんどが「知っている方」で、その場で「じゃあ今から2名、席をとっておいてくれますか」と仰います。

 でも、その営業時間後にかかってきた電話は、携帯電話からじゃなかったんです。冒頭の営業電話のように、「固定電話」からで、僕が出てから、少し間があって、通話ボタンを押したような気配があって、「もしもし今、営業してますか?」って言ったんです。

 普通、バーに固定電話から「今やってるかどうか」の確認ってまずないんです。普通は携帯電話からです。

都にチクるために電話する人々

 これ、同業のバー経営の友人から教えてもらいました。ご存じ、世の中には自粛警察という人たちがいまして、その人たちが「営業時間を守っているかどうか」を確認するためにかけているそうなんです。

 そして、聞くところによると、「HPやSNSには、都の要請に従い時間短縮営業です」と表示してあるお店で、「協力金」は貰いながら、看板はいれて表の灯りも消して、こっそりと営業しているお店もあるといいます。その人たちは、そういうお店を「摘発」して、「都にチクるため」に、複数の店舗に順番に電話をしているそうなんです。

 生活保護を受けている人たちが、タバコやお酒を買っているのを「自分たちの汗水垂らして働いた税金をそんな風に使いやがって」と怒る人たちっていますよね。そういう感覚の人たちが、夜中に家の電話から「今、営業していますか?」って飲食店にかけているのだろうと想像できます。こういう人たちって日本以外の国にはいるのでしょうか。でも、こういう「監視しあう」という状況が日本の治安の良さや今回の意外と少ない感染数と関係があるのかもしれないですね。

大きな店舗を持っている会社は完全に足りない

 さて、緊急事態宣言の第2回目です。「権八」や「モンスーンカフェ」を運営するグローバルダイニングさんが、「時間短縮の要請に応じない」と宣言していて話題になりました。「今の行政からの協力金やサポートでは時短要請に応えられません」だそうで、ほんと、今回の「時短要請の協力金」、大きい店舗でたくさんの社員やバイトを雇っているお店は、完全に足りないんです。

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