今回で3回目となる「高市早苗研究」。ノンフィクション作家の高木徹さんの取材(「『中の人』佐伯内閣広報官の告白90分」)に、佐伯耕三・内閣広報官は、安倍晋三元首相と高市首相についてこう語りました。
「考え方や政策は高市総理も安倍総理も似ているので、延長線上でやれています」
佐伯氏は安倍氏の首相秘書官を務めており、高市政権でも官邸入りしました。安倍氏の政務の首相秘書官だった今井尚哉氏も内閣官房参与に入るなど、安倍政権の継承を掲げるだけあって、両政権には共通点が多くあります。佐伯氏も「安倍総理のスピーチライターをして、今も高市総理のスピーチにかかわっていますが、もし自分の考えと違うものがあったら、なかなか難しい。その点、ストレスはまったくありません」。

では、違う点はあるのでしょうか? 高市首相の経済政策は「サナエノミクス」と呼ばれていますが、佐伯氏は「アベノミクスの延長線上だと感じています」とのこと。ただ、日本経済の構造が以前と大きく変わっていることを指摘したのが、山崎慧氏(三菱UFJモルガン・スタンレー証券グローバル投資ストラテジスト)の記事「サナエノミクス、なぜ生活は苦しいのか」です。2022年から日本経済は「インフレ経済」に突入したため、企業と政府は豊かになる一方、国民の生活は苦しくなっている。ここに手を打つポスト・アベノミクスの経済政策が必要なフェーズになっています。
私自身の体感で言えば、危機管理は安倍政権とは大きく違うと感じています。前号で、高市首相の最側近官僚である茂木正・官房長官秘書官の不正出張問題を報じました。正直に言えば、この記事は発売時点では“無力化”されるのではないかと危惧していました。茂木氏に取材を申し入れたのが、5月21日。その時点で、官邸は事案を把握したことになります。私は、安倍政権当時、「週刊文春」の編集長でした。同じような事案が発生すると、菅義偉官房長官や杉田和博官房副長官がすぐ調査に乗り出し、あっという間に更迭していました。賭けマージャン問題の黒川弘務・東京高検検事長は雑誌発売の前日には辞任が報じられ、後任まで決まっていました。河井克行法相は、発売当日の朝に官邸に辞表を持って行きました。
ただ、週刊誌と違って、月刊誌の場合は、取材から発売まで2週間以上、間が空きます。私の予想では、茂木氏は早々に切られ、理由不明のまま人事だけが小さく報じられ、雑誌が発売される6月10日には、過去のことになっているのでは、と半ばあきらめていました(そのため、電子版で先出しすることも検討していました)。

ところが、官邸に動きはなく、雑誌は無事(!?)発売され、記事を受けて、官房長官会見や国会で質問が出て、木原稔官房長官が回答を余儀なくされました。茂木氏は、官房長官秘書官のため、長官会見に同席します。茂木氏にテレビ局や新聞社のカメラが向けられる事態になっていたのです。
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