「文藝春秋」は、会社の名前をそのまま冠した雑誌です。その名の通り、毎月の雑誌作りでは、編集部を越えて、社のさまざまな部署の力を借りています。次号で、受賞作が発表される芥川賞(年2回)などは、まさに文芸部門の力を借りずには成立しません。今号にも、他部門の編集者による企画が3本載っています。
「現在は第三次世界大戦の渦中である 日本の米追従は自殺行為だ」(E・トッド)、「壊れゆく世界への抵抗」(ブレイディみかこ×内田樹)、新連載「底線思考」 第1回「元には戻らない世界のなかで」(佐橋亮)です。この中には、こちらからお願いしたものもあれば、編集者の売り込みで掲載を決めたものもあります。実は、この3本の担当者、我が社が誇るベストセラー編集者たちです。

今回、やり取りする中で、共通点がありました。まず、担当する作家、書籍への熱。愛と言い替えてもいいかもしれません。一人でも多くの読者に届けるために「何でもやります」感が伝わってくるのです。「底線思考」は、佐橋亮・東大教授による新連載。佐橋さんは、米中関係研究の第一人者として知られ、政財界のリーダーから注目を集めている気鋭の国際政治学者です。この佐橋先生の本を作るために「本誌で連載できないか」。そんなオファーを担当編集者から受けました。私としては、連載ラインナップにぜひほしい。しかし、毎号となると専門知識も必要で人手が……。すると、「佐橋先生とのやり取りはすべて私がやって、入稿できる状態にしてお渡しします」。いわゆる完パケです。これなら断る理由はありません。
二つ目は「自分事化」です。エマニュエル・トッド氏の論考は、本誌の人気企画であり、折に触れて掲載してきました。ただ、トランプ政権の暴走により、世界は刻一刻と変わっています。イランとの戦争を踏まえた最新版をお願いできないかと、書籍の担当者にお願いしました。彼は、ベストセラー編集者だけに多くの仕事を抱えています。しかし、二つ返事で引き受けてくれ、テーマのネタ出し、インタビュー、構成まですべてやってくれました。そして、あまりに話が面白いので「17ページください」。他部門からの頼まれ仕事でも、自分事ととらえて、ベストのものを全力で作る。今回の論考を含めたトッド氏の新刊が秋にも出る予定です。

三つ目は、「スピード」です。ブレイディみかこさんの新刊『それはどこでも起こり得る 壊れゆく世界への抵抗』(文藝春秋)刊行にあわせた内田樹さんとの対談も、担当編集者の売り込みでした。日程はタイトでしたが、対談が無事終わり原稿も完璧。その告知を兼ねたスクープ速報という記事をお願いしたところ、翌日には届いていました。これも、本と対談の中身がすべて理解できているからこそのアウトプットの速さなのでしょう。
三人とも、自分が書き手ならこんな人に担当してもらいたいと思う編集者です。私もかくありたいと思わせてくれた、8月号でした。
(編集長・加藤晃彦)
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