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【関根勤さん×渡辺真理さん】相続オンラインセミナー開催レポート 「長寿時代二人三脚的発想のすすめ」

文藝春秋では、三菱UFJ銀行・三菱UFJ信託銀行・三菱UFJモルガン・スタンレー証券協賛の下、「長寿時代二人三脚的発想のすすめ」と題したオンラインセミナーを開催した。人生100年時代を迎えた今、相続の現場で何が起きているのか、円滑な相続に向けて何をしておくべきか。タレントの関根勤さん、アナウンサーの渡辺真理さんをゲストに招き、三菱UFJ信託銀行フェローの小谷亨一氏と、円満相続の秘訣を話し合った。

「思いのギャップ」を埋めてトラブルを予防

 親子でタレントとして活躍し、家族仲が良いことで有名な関根さん一家。最近では孫も生まれ、ますます賑やかな日々を送っているという。

渡辺さんが「親子で頻繁にコミュニケーションを取っていらっしゃるんですか?」と尋ねると、「娘や孫とは毎日顔を合わせて話していますよ。それに親子で同じ事務所ですから、財産の状況などもおおよそは共有できています」とのお答え。

これを聞いた小谷さんは「関根さん一家のように普段から家族同士でコミュニケーションできているかが、円満相続の鍵を握ります」と話す。

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というのも、相続では「我が家では争いなんて起きない」「子どもたちならわかってくれる」と思いがちだが、実際には親子それぞれに事情が異なり、相続に関する考えも異なっていることが多いからだという。

小谷さんは「財産をめぐる『思いのギャップ』が、相続トラブルの原因になるんです」として、とある具体例を説明した。

 その一つが、夫婦と兄妹の四人家族での相続だ。自宅が財産全体の7割を占め、金融資産は3割。自宅には両親と兄夫婦が同居しており、兄が土地屋敷を相続することが順当に見える。

しかし妹の取り分は少なく、兄妹での相続財産のバランスが悪くなってしまう。これに妹が納得しなければ、遺留分侵害請求訴訟に発展する恐れもあるというのだ。

遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人に認められた、一定割合の相続財産を受け取る権利のこと。遺留分を侵害された法定相続人は、侵害された分を金銭で補うように求めることもできる。「兄弟間で揉めると感情も入ってこじれやすくなります」と小谷さんは注意を促す。

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 こうしたケースは珍しい話ではない。日本は高齢者の資産に占める不動産の割合が6割と、世界に比べても高い。しかし不動産は現金のように平等には分けられないため、相続において財産分配のバランスが崩れやすいのだ。
では、争いを起こさないためにどうすればいいのか。

小谷さんは「親が生きている間に子どもたちと話し合っておくことが大切です」と説明する。

 このケースでは、父親が妹に対して「兄夫婦は妻の面倒も見てもらうから、自宅を継がせたい。妹のことも大切に思っているので、金融資産は多めに渡したい。どうかわかって欲しい」と話し、妹への愛情と配慮を見せることで、納得感が得られやすくなるという。

「遺言で数字だけ見ると不平等感を抱くかもしれないけれど、親父さんから面と向かって説明してもらえば、娘さんも受け入れやすいですよね」と、これには関根さんも納得の表情だ。

「親が亡くなった後ではもはや思いを伝えることも、誤解を解くこともできません。大切なのは親が生きているうちに、子どもたちと胸襟を開いて話し合い、思いのギャップを埋めることです」と小谷さんは強調する。

活用したい遺言の7つの機能

 最近はコロナ禍の影響もあり、万が一に備えて遺言の作成を考える人が増えているという。

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そこで渡辺さんは「遺言を残せば相続においてどんなことができるのでしょうか」と質問。

小谷さんは遺言の機能として、次の7点を挙げて説明した。

① 財産内容の明確化
② 財産配分の決定
③ 遺産分割協議の不要化
④ 第三者への分与
⑤ 遺言執行者の指定
⑥婚外子の認知や相続人の廃除
⑦気持ちの表現

「こうした遺言の機能を活用すれば、相続手続きが円滑に進みます」と小谷さん。

例えば、遺言作成の際に財産目録を作成しておけば、手間のかかる財産調査が不要になるという。

 特に気をつけておきたいのが、ネット証券などのデジタル資産の管理だ。

「インターネットで取引が完結する金融機関の場合、紙の通帳や証書がなく、遺族が後から調べるのは大変そうです」と渡辺さんが懸念を示すと、小谷さんも同意する。

小谷さんは「亡くなった方がどこの金融機関と取引しているのかもわからないと、故人のパソコンを調べて取引記録を調べたりと、財産調査が大掛かりになります。遺言の財産目録にはデジタル資産も忘れずにまとめておくことが大切です」とアドバイスする。

 人生の集大成となる言葉を綴るさまざまな遺言機能の中で、小谷さんは「⑦の気持ちの表現を大切にしてほしい」と話す。遺言には「付言事項」として、思いを自由に書き綴ることができる項目がある。

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この項目を使えば遺言の作成動機や財産配分の理由、そして家族への感謝などを言葉にして残せるため、遺された相続人に思いが伝わりやすい。人生の集大成となる言葉ゆえに、1週間程度かけてじっくりと推敲する人も多いという。

 ここで渡辺さんが、ある男性が遺言の付言事項で家族にあてたメッセージを代読すると、関根さんは「最期の言葉ですから、心にずしんときます。日本人は愛情表現が苦手だけれど、言葉できちんと伝えるのはやはり大切ですね」と心を打たれた様子だ。

「僕自身、いつも妻や子どもたちに接するときは『僕と一緒になってくれてありがとう』『生まれてきてくれてありがとう』と感謝を忘れないように心がけています。今日のお話を聞いて、僕自身も遺言を書いてみようと思いました。後から何度でも書き直せるわけだから、経験値を積んでよりよい内容に練り直していけばいいですよね」と意欲を見せた。

 さらに関根さんは「ビデオレターをつけても、面白いかもしれないですね。失敗も含めて、今後の話のネタに使えそうです」とユーモアあふれるアイデアも披露した。

 これには小谷さんも笑顔。その上で「円満な相続の秘訣は、親子で思いを一つにして二人三脚で行うこと。配偶者、子ども、孫、兄弟、親戚と、思いを一つにする人たちが多いほど、資産承継はうまくいきます。人生100年時代を迎えた今、いずれ介護などで周囲の世話にもなるでしょう。そんな時にも、思いを理解しあえる家族や仲間がいることが助けになるはずです」とエールを送った。

 普段から愛情と感謝を忘れずにコミュニケーションをとっている関根さん一家であれば、きっと円滑な相続と、充実のセカンドライフを実現できるに違いない。

2020年12月25日、文藝春秋にて開催 撮影/深野未季(文藝春秋写真部)

source : 文藝春秋 メディア事業局