「あたたかき鰻を食ひてかへりくる道玄坂に月おし照れり」
こんな歌を詠んだほど、歌人・茂吉は「花菱」の鰻をことのほか愛した。青山脳病院から代々木公園まで散歩する途中で鰻を食し、帰って行くのが日課だったという。出前もよく取り、「1日に2度ご注文があったとも聞いております」(店主)。
鰻を食うと頭が冴えると信じていた茂吉は、食後5分で目の輝きが違ってくると言い、周囲を呆れさせている。
大正10年創業の「花菱」は、国産にこだわり、鹿児島や浜名湖から取り寄せた活鰻を、注文を受けてから捌く。そして、約40分かけて丁寧に焼き上げる。
重箱を開けると、香気が顔面に押し寄せる。ひとくち含めば、滋味が口腔いっぱいに広がる。茂吉はこの瞬間の喜びを創作の意欲としていたに違いない。
(住所)東京都渋谷区道玄坂2-16-7 ☎03-3461-2622
(営業時間)11時半~15時、17時~22時
(休)日曜・祝日
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source : 文藝春秋 2023年7月号