新型コロナウイルス対策が後手に回り支持率は急落、難しい局面に立たされている菅義偉首相。菅首相の長男による総務省幹部「接待疑惑」について「週刊文春」が報じ、東スポWebは「長男の“コネ入社疑惑”で…菅首相吹っ飛んだ『改革派、叩き上げ』イメージ」と書いた。
森喜朗氏がJOC女性理事を巡って「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」という趣旨の発言をしたことについて、2月4日の衆院予算委員会で菅首相は「森会長が発言された内容の詳細は承知していない」と答弁。(のちに「国益にとって芳しいものではない」「あってはならない発言だ」という認識を示した)。なぜ菅首相はこれほどなにも「説明しない」のか。「勝負師」とも「ギャンブラー」とも言われる菅首相の人物像について、時事芸人のプチ鹿島さんがあらためて考察する。(前編から続く)
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説明しない「改革」はただの「破壊」
平成からずっと政治家のあいだで流行している言葉はなんだろう?
おそらく「改革」ではないか。
小沢一郎、細川護熙、橋本龍太郎、小泉純一郎、小池百合子、橋下徹、そして安倍晋三に菅義偉。代表的な名前だけをあげてみても「改革」はそれぞれの売りだった。とくに「既得権益を打破」という言葉はおなじみだ。
菅義偉は携帯電話料金の値下げを訴えた。これにはしみじみしてしまう。なぜって政治家が30年以上にわたって「改革」を叫び続けた結果、今の首相は「損得」の話しかしなくなったのである。
誰だって自分に関わるものが安くなれば嬉しい。しかしその手法を注視すると危うさが含まれている。
政治家・菅義偉と言えば人事。官房長官時代から内閣人事局を背景に官僚の人事権を握った。政治主導を強力にしつつも、官僚の忖度を招いたと指摘されてきた。
すると官僚だけでなく学者にも手を伸ばしてきた。日本学術会議が推薦した会員候補6人を菅首相が任命しなかったことが判明。
「推薦された方をそのまま任命してきた前例を踏襲していいのか考えてきた」(日本経済新聞2020年10月6日)
なぜその6人なのか肝心の理由は今も説明していない。
《政府は「適法」を強調したものの、説明不足との印象は拭えなかった。》(読売新聞2020年10月8日)
説明しない改革はただの破壊である。
菅義偉首相
巧妙だと思うのは説明しないことで人々の憶測を利用することもできることだ。任命されなかったことで過去に何か思い当たるフシはなかったかと本人や周囲にも考えさせ、マスコミも原因らしきものを書く。そしていつの間にか学術会議の問題になってしまう。「既得権益」の話に見事にすり替わっていた。
このレトリックについて解説していた記事がある。
「(山腰修三のメディア私評)学術会議問題 改革を評価し、批判を忌避する『空気』」(朝日新聞2020年11月13日)
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