小川氏
徒歩での1キロが辛い
最初に症状が出たのは、11月16日月曜日のことです。地元、香川県で発生していた鳥インフルエンザの対策のため、厚生労働省と農林水産省の大臣と面会し、午後には国会内のジムで汗を流した後、議員宿舎に帰宅。そこまでは元気でした。
夕食後にだるさを感じ検温すると37度5分。早めに布団に入ったものの深夜にかけて熱は39度まで上がり、しんどさは増しました。
翌朝、都発熱相談センターに電話して、検査場所として指定されたのは宿舎から約1キロ離れた病院でした。バスやタクシーは避けねばならず、徒歩での1キロが辛いのです。
到着後、「まずは」と抗原検査を受けたのですが、結果が出るまでものの数分。医師から「陽性」と告げられた時はショックでした。会食は最小限に控え、手指の消毒も1日10回以上はやっていました。心当たりがなく、まさか自分が――と。
帰宅する道中、携帯電話で家族と秘書、党の国会対策委員長の安住淳衆院議員の3人に伝えました。議院運営委員会の野党側の筆頭理事の立場で国会に迷惑をかける申し訳ない気持ちと同時に、この数日間、会った人たちに大きな影響を及ぼすのではないか――そんな不安が胸を過ったことを記憶しています。
感染力があるのは、発症2日前からとされています。その間、会った人の記憶をたどると、週末に地元の選挙区で陳情や要望を受けた支援者や霞が関の大臣など、少なくとも数十人に及びました。幸い、面会時はほとんど互いにマスクを着けていて、濃厚接触者とされたのは会食相手や秘書、家族など10人足らず。その人たちも、全員が陰性でした。
ただ「該当しない」と判定されても、不安を感じ、数万円を自分で支払って民間検査を受け陰性を確認した人もいます。マスクを「着けていない人」は公費で検査を受けられ、「着けていた人」は自費――矛盾が生じているのです。
生と死をわけた検査の遅れ
入院3日目に「侮れないウイルスだ」と改めて痛感させられました。
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source : 文藝春秋 2021年3月号