1月28日、文藝春秋によるオンラインセミナー「失敗しない高齢者施設選び」が開催された。4団体の協賛を得て行われたこのイベントには、作家の藤原正彦さんも登壇し、基調講演を行った。また、各施設の紹介も、それぞれの魅力を十全に伝える充実した内容となった。
◆懐かしいメロディーを口ずさんで
冒頭を飾った基調講演は、作家の藤原正彦さんによる「我が人生の応援歌」。その標題の通り、藤原さん自ら披露する歌声が彩る楽しい時間となった。
父・新田次郎が遺した絶筆を息子である藤原さんが書き継いで完成させた『孤愁〈サウダーデ〉』は、明治後期の日本に滞在したヴェンセスラオ・デ・モラエスの評伝。このポルトガル人外交官は、日本のことを、歌に満ちた美しい国だと評した。
藤原さんは、「赤とんぼ」「花かげ」「雨」といった日本の童謡と「ロンドン橋落ちた」「きらきら星」「線路は続くよどこまでも」などの海外の童謡を比較し、日本の楽曲は悲しさが際立っていると指摘した。そしてそれは、童謡のみならず、戦後の歌謡曲まで続く伝統であるとも。
藤原正彦さん
歌をはじめ、日本の大衆文化には、我が国ならではの情緒と形が反映されていた。大正時代以降の指導者がそれらを軽視し、借り物の西洋文化ばかりを重んじた結果が、第二次大戦における無残な敗戦であったという。
藤原さんは、懐かしの歌の数々を実演する「東京大衆歌謡楽団」というバンドを観るため、しばしば浅草神社の境内まで足を運ぶ。その場に集まる高齢者たちは、誰もがいい顔をしているそう。コロナ禍以降の世界を生きるために、思い出の歌を口ずさむことは役立つと強調し、講演は幕を閉じた。
◆自分らしく自由に暮らせる毎日
協賛施設の紹介においては、まずは東京都住宅供給公社から「明日見らいふ南大沢」所長の桑野統央さんが登場した。
桑野統央さん(東京都住宅供給公社「明日見らいふ南大沢」所長)
八王子市南大沢は、芸術と文化の街と呼ばれるエリア。周辺には多摩丘陵の自然を満喫することができる大小の公園がある。そして、2万5000平米を超える広大な敷地を有する同施設では、そのスケールメリットを生かしたさまざまな試みが行われている。プールやトレーニングジム、家庭菜園などは、自立期のアクティブな入居者にはぴったりの楽しみを与えてくれる。さらに、看取りまでの切れ目ないサポートも充実している。
住宅のプロである東京都住宅供給公社が事業主体となり、福祉のプロである社会福祉法人聖隷福祉事業団が運営を担うという体制も安心の源だ。
桑野所長は、「明日見らいふ南大沢には、自分らしく自由に暮らせる毎日と、それをそっと見守る『安心』があります。私たちの施設は、みなさまを素敵に輝かせる『我が家』でありたい」と述べた。
◆有料老人ホームとして約50年の経験を生かして
次に登壇したのは、社会福祉法人聖隷福祉事業団の平川健二さん。保険・医療・福祉・介護サービスの4領域を総合的に提供する同法人は、全国1都8県にて162施設を運営、1万5000人もの職員が働いている。
平川健二さん(社会福祉法人聖隷福祉事業団)
同法人は、「エデンの園」という介護付有料老人ホームを全国7カ所8施設にて運営している。西から順に挙げると、松山、宝塚、浜名湖、藤沢(2施設)、油壺、横浜、浦安。魅力的な立地を誇る各施設は、いずれも園内に診療所があったり、近隣に協力医療機関があったりするため、医療や健康管理に関し、最適なケアを受けることができる。
平川さんは、エデンの園の3つのセールスポイントを説明した。「1点目は、法人として90年、有料老人ホームとして50年近くとなる歴史から得た経験。2点目は、病院などの事業を通じた医療面での強み。3点目が、自然災害や昨今の感染症への対策にも力を入れているということ」。そんなエデンの園なら、安心して老後を過ごすことができそうだ。
◆住むことで健康になるマンション
株式会社フージャースケアデザインは、首都圏を中心に「デュオセーヌ」というシニア向け分譲マンションを展開している。同社代表取締役の佐藤多聞さんは、シニア向け分譲マンションと老人ホームの違いを説明した。
佐藤多聞さん(株式会社フージャースケアデザイン代表取締役)
「シニア向け分譲マンションの最大の特徴は、所有権が伴うということ。そのため、自分で住むのみならず、賃貸を行って収益を上げたり、売却や相続という形で処分することができます。住宅ローンもご利用可能です」
門限などの生活に対する束縛や、食事に関する制限がない点も、分譲マンションならではのメリット。館内には24時間スタッフが常駐し、日々の困りごとや相談に対応。看護師なども常勤し、医療や介護のサポートを行っている。また、入居者が自発的な形で運営に当たるサークル活動も盛んだ。
昨年オープンした「デュオセーヌ国立」は、地域との共生というコンセプトが評価され、グッドデザイン賞を受賞した。「住むことで健康になるマンション」を目指すデュオセーヌに、ますます注目が集まりそうだ。
◆「生涯自立」をテーマに
神奈川県住宅供給公社からは、染谷良太郎さんが登壇。同公社は、横浜市(2カ所)、川崎市、相模原市、横須賀市の5カ所に自立型介護付有料老人ホーム「ヴィンテージ・ヴィラ」を展開している。
染谷良太郎さん(神奈川県住宅供給公社)
「生涯自立」をテーマに掲げるヴィンテージ・ヴィラ入居者の要介護認定率は、全国平均に比べると低い。その理由として、染谷さんは「介護予防に際して据えた“食事・運動・生きがい”という3本柱のテーマが功を奏したのではないか」と語る。食事面では県立大学とともにメニューを考案し、運動面ではミズノと共同研究を行い、生きがいの面においては県立音楽堂でコンサートを開くなど、健康維持のための取り組みに余念がない。
将来、介護が必要となった場合は、自分の居室に住みながらスタッフから必要なケアを受けることができる。さらに重度の要介護状態となった場合は、追加費用なしに、提携施設である介護付有料老人ホーム「トレクォーレ」に移り住むことが可能。サポート体制は後々まで万全だ。
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長寿時代を、自分らしく幸せに過ごすためには、安心の住まいが必要。このイベントは、豊かな後半生を実現するためのヒントに満ちあふれていた。
2021年1月28日 文藝春秋にて開催
source : 文藝春秋 メディア事業局