「文句を言うのなら、飛ばすぞ」。主筆室での面談は1時間半に及んだ
1
「大変ですね……」
高橋由伸の作意のない口調には、こちらを気遣うようなところがあった。14年間も巨人の看板選手であり、松井秀喜が去った後も精神的支柱であり続けた彼は36歳になっていたが、多情多感なところは変わらない。私はうめくように、
「うーん、いろいろあってね」
と応えるしかなかった。2011年11月10日のことである。彼は契約更改のため巨人球団代表室にやってきたのだが、スポーツ紙の報道を通じて、球団内の不穏な空気を察していたのだろう。
巨人会長の渡邉恒雄が、了承していたコーチ人事をやり直す、とスポーツ記者の前で宣言してから6日が過ぎていた。
私は少しずつ決意を固めつつあった。この決断のために、高橋と2人だけのこの場が、巨人代表兼GMとして彼と交渉する最後になるだろう。できれば高橋の契約更改は私の手で済ませておきたい、と思っていた。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2024年12月号