「ここで禄を食んでいたくない」──なぜ読売新聞と決別したのか
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読売新聞グループと決別して、だいぶ経ったころ、あるメディアから「渡邉恒雄氏が死去したときに何か書いてもらえないか」という依頼を受けた。読売新聞主筆である渡邉が逝去した場合、新聞界のドンの功罪や彼亡き後の巨大新聞社の行く末について論じてもらいたい、という趣旨である。執筆の事前予約のようなものだろうか。
メディアが権力者や著名人の逝去に備え、通り一遍ではない紙面を作ろうとするのは当然のことである。死はいつも不意に訪れるからだ。そのため、新聞社やテレビ局のパソコンには、著名人の業績や経歴などの情報を綴った膨大な予定稿が蓄積してある。
――そうか、このメディアは死亡したという速報記事だけでなく、追悼の評論まで幅広く用意しているのか。
私は周到な準備に感心した。
死亡記事のことを、新聞記者の世界では「亡者(もうじゃ)記事」と呼んでいたが、かつてはその予定稿が半端だったり、外国関連だったり、締め切り直前で不意を突かれたりして、編集局で大騒ぎをしたものだ。
私が社会部主任時代のことである。
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source : 文藝春秋 2024年9月号