OSが違っていても

第30回

清武 英利 ノンフィクション作家
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若者の立場まで下りる──伝説の「三原ノート」に見た指導者の極意

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 東京・音羽の講談社は大学生に人気の高い出版社だが、「週刊現代」に代表される出版報道、つまりジャーナリズム系の志望者は、いまや絶滅寸前の状態にあるという。

 2025年度の採用応募者はその傾向に拍車がかかり、出版報道部門への志望は、5000人弱の総出願者のうち、1パーセント程度に過ぎなかった。同社の出版報道部門には、彼ら若者の援軍は望めないということだろうか。

 出版社の編集者や記者と、私がいた新聞社の世界は深いところでつながっていた。出版社系の編集者の中には、気軽に新聞社に出入りする者がいて、お互いに競い合いながら、大きなメディアの世界を支えてきた。

 私自身も社会部記者時代にしばしば雑誌に寄稿していた。その雑誌の中には、社会部の先輩から「文章の鍛錬になるから君も書け」と紹介されたものもある。外部の媒体に執筆することは小さな誇りであった。新聞紙上だけでなく、雑誌にも書き分けられる新聞記者は一目置かれたのだ。そこで長い記事を書いた体験が今の作家活動を支えている。

 その一方、証券不祥事や不良債権問題で出版社系の雑誌に出し抜かれたり、情報をやり取りしたりしたことがたびたびあった。そこには尊敬に値する編集長や元気なデスクが間違いなく生きていた。

 そして、出版報道の一翼を担った講談社には、いつかは俺も「週刊現代」や旗艦誌の「月刊現代」(2008年廃刊)の編集長になるぞ、という空気があった。四、五十代の社員に限られるかもしれないが、今も編集長は誇りある地位である。

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source : 文藝春秋 2024年7月号

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