今回、この特集で取り上げられる五つの臓器の中で、皆さんが普段気にする機会が少ないのが「腎臓」ではないでしょうか。肝臓や膵臓と同様「沈黙の臓器」の異名を持ち、そこに異常が起きてもなかなか自覚症状が出ない。しかし「肝腎かなめ」という言葉もあるくらい、生体にとっての重要性はきわめて大きい臓器なのです。
腎臓の機能を一言でいうと「体の恒常性を保つこと」。なかでも代表的なのが、体の中で生まれる老廃物を血液から濾過(ろか)して分離し、尿として排泄する「排出機能」です。この機能がないと血液中に毒素が溜まって全身に運ばれてしまうだけでなく、水分や電解質のバランスが崩れて生命維持が困難になっていくのです。
腎臓にはホルモンを産生する「内分泌機能」もあります。腎臓はつねに体内の様々な「圧」を感知して、それに応じて血圧を調整する働きも担当しています。腎臓が分泌する「レニン」という物質は、この血圧調整に必要なホルモンです。それだけに正確な圧を感じ取る必要があり、その精度を高める目的で腎臓は二つある――と考えられています。正常な働きをしていればどちらか一つの腎臓で生きてはいけるのですが、あえて二つ用意されているところに腎臓の重要性が見て取れます。
腎臓を成長面と機能面で見たとき成人後は老化に転じていきます。つまり私たちの人生の大半は、腎臓の老化とともに過ごしているのです。
腎臓が老化して機能が低下しても、すぐに自覚症状が出ることはありません。浮腫(むく)みや尿量の変化、だるさや貧血などの症状が出るのは、腎疾患がかなり進んでからのこと。つまり腎臓の状態を知るのに自覚症状をアテにすることはできません。症状が無いからと放置すると、いつの間にか腎不全という取り返しのつかない事態に陥ってしまいます。言い換えれば、定期的な健康診断での血液検査は、老化の度合いを知る唯一の手段ということができるでしょう。
血液検査でわかる腎機能の状態を示す指標「eGFR」(60以下は腎機能低下)と、筋肉を動かすエネルギーの残渣物が血中に残ってしまった「血清クレアチニン」(正常値は男性は1.2mg/dl以下、女性は1.0mg/dl以下)の値、そして尿検査で分かる「尿タンパク」(同、150mg/日以下)の結果を見て、異常が指摘されたらすぐに医療機関を受診しましょう。これを怠ると、腎臓の健康を取り戻すことは困難になります。
腎臓は老化とともに機能も低下しますが、腎臓には予備能があるので、低下した機能もある程度は代償されます。とはいえ、失った機能を残された部分で補い続けて行けば、当然そこには強い負荷がかかって傷害はさらに進む。そして最終的に行きつく先が腎不全です。
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