肺は胸の「胸腔」と呼ばれる閉ざされた空間にあって、その実態を目で見ることはできません。
しかし肺は、他の臓器とは異なり、つねに「外気」を取り込んでいます。外気と接している「皮膚」と同じ状況にあるわけで、外気が乾燥すれば皮膚も乾燥し、汚い粉塵にまみれれば皮膚も汚染されるのと同じことが肺でも起きているのです。そのため「肺の老化」は比較的早く始まります。
呼吸機能の検査では、胸いっぱい吸い込んだ空気を勢いよく吐き、その最初の1秒間に吐いた息の量を計測する「1秒量」という指標がありますが、この数値は年齢とともに低下していきます。肺の機能面でのピークは20歳前後。それ以降は「肺の老化」は進行していくのです。そして一度老化すると、若返ることはありません。
では、肺が老化すると、どんな変化や症状が出てくるのでしょう。
日常生活で肺の老化に気付くきっかけとして、最も代表的なのは歩行時の「息切れ」です。最初は階段や坂道を上っていて息が切れることから始まり、そのうちに平坦な道でも息が続かなくなる。「息切れ」というと軽く見られがちですが、これはきわめて深刻な症状で、息切れを理由に外出ができなくなる人も多く、結果として全身状態を急速に悪化させていくことになるのです。
息切れという症状は、肺以外の老化が原因で起こることがあります。たとえば心臓の機能低下によって十分な量の酸素が送り出せなくなって起きる息切れや、酸素を運ぶ「ヘモグロビン」が不足して起きる、いわゆる「貧血」による息切れなどもあります。あるいは全身の筋力低下が息切れを招くことも。高齢で全身の筋力が低下すると、呼吸の際に使われる筋肉も弱ってしまうからです。
息切れという症状から、それが肺の老化なのか、心臓の病気なのか、あるいは筋力低下が原因なのかを自分で探り出すことは困難です。そこで私の勤務する神奈川県立循環器呼吸器病センターでは、「息切れ外来」という専門外来を設置し、息切れの根本原因がどこにあるのかを調べる検査を行っています。循環器科医と呼吸器科医が診ることで、確実性の高い診断と治療に結び付ける外来です。気になる人は一度、原因を調べてみることをお勧めします。
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