海外市場の拡大、縦読みマンガの伸長。岐路に立つマンガ業界

マンガの未来

村松 充裕 STUDIO ZOON編集長
エンタメ 企業 テクノロジー 読書

 好況の裏側で激しい変化を続けるマンガ業界について、4つのポイントに分けて解説をします。

 1つ目は「海外市場の拡大」です。10年以上前からクールジャパンが標榜され、マンガ産業はその中心に位置付けられていましたが、実際に海外でマンガ自体が大きく売れるようになったのはここ3~4年の話です。Netflixなどの配信サービスがきっかけで日本アニメが以前より世界中で視聴されるようになり、その原作であるマンガに注目が集まった形です。

 市場が元々大きかった欧州で手堅く伸びる一方、大きく市場を伸ばしているのは北米。それも電子でなく紙が中心なのが特徴です。その理由として、日本のマンガは長らく海外のオタクたちによってボランティア的に翻訳され海賊版サイトにアップロードされてきたため、海外では電子版のマンガにお金を払うことに抵抗がある(=紙でないと価値を感じない)ようです。この海賊版問題は現在も続いていて、各出版社も対応はしていますが、クレームや裁判を受けサイトを閉じてもすぐ新たな形で立ち上がり……というイタチごっこ。

画像はイメージです ©beauty_box/イメージマート

 そんな中、集英社の「MANGA Plus」や講談社の「K MANGA」など出版社が海外で公式マンガアプリを直接リリースするという動きも出てきました。これらは海賊版への対抗策であると同時に、「アニメの原作として新たなマンガと出会う」のではなく「連載メディアで新たなマンガと出会う」という日本的なマンガ文化を海外ユーザーに根付かせようという挑戦でもあります。

 2つ目は「国内市場の電子化」です。海外とは対照的に国内は電子比率が年々高まり、すでに紙市場を上回っています。そして、市場の電子化が進むに伴い、あらゆる面でこれまでにない選択肢が生まれました。まず紙しかなかった時代に比べるとマンガ業界に出版社以外の新規プレイヤーが参入しやすくなりました。私自身、元々は総合出版社に勤めていましたが、現在はサイバーエージェント社に転職し縦読みマンガの編集者をしています。これはマンガの仕事をやるなら出版社に入るしかなかった時代には考えられなかったことです。

 作家目線でも、従来の出版メディアで人気を獲得しヒット作を作るという方法以外にも、電子書店の編集部で独占配信作品を作る、スタジオで縦読みマンガを共同制作する、SNSで作品をバズらせて認知を拡大しKindleダイレクトパブリッシングやpixivFANBOXなどのサービスを活用して読者に直接販売する……など様々な方法で収入を得ることが可能になりました。

 そんな中で出版社は弱体化しているのかというと全く逆で、プラットフォームによるコンテンツの取り合いが激化しマンガ発のIP(知的財産)に脚光が集まる中、それらを多数擁する総合出版社はこれまで以上に強い立ち位置を占め続けています。しかし、このまま電子比率の上昇とプラットフォームの寡占化が進めば、コンテンツ制作側が厳しい条件を飲まざるを得なくなる危険性もあります。

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source : ノンフィクション出版 2025年の論点

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