心臓の役割というと、全身に血液を送り出すポンプ機能が思い浮かぶと思います。たしかに役割の大半は「ポンプ」としての働きに集約されますが、実は、様々なホルモンを分泌する機能もあります。代表的なのがナトリウム利尿ペプチドというホルモンで、これを出すことで血管を拡げたり、利尿作用を発現するなどして、心臓自身を心不全から守っているのです。
そんな心臓も老化はします。まず、直接的に心臓を弱らせるのが血管の老化。代表的なのが「動脈硬化」です。喫煙や塩分の過剰摂取で動脈硬化が進むと、全身の血管が硬くなっていく。血管は本来柔らかくできていますが、柔軟性を失うと心臓が打つ拍動の衝撃が血管壁に吸収されず、そのまま心臓に返ってきてしまい、心臓自体が損傷します。また血管が硬くなってしまった場合、心臓が強く拍動しないと全身に血液を送り込めなくなるので心臓に負担がかかり、血圧も高くなる。つまり「高血圧」です。結果として動脈硬化と高血圧は、心臓の老化の大きな要因となるのです。
それだけではありません。血圧が高まると、血液を送り出そうとする心臓にさらに強い負荷がかかります。それでも心臓は頑張って拍動を繰り返すので、心臓を構成する「心筋細胞」という細胞が大きくなり、心臓全体が大きくなってしまうのです。これを「心肥大」と呼び、単にサイズが大きくなるだけでなく、心筋の壁が厚く、硬くなっていきます。この心肥大も、心臓の老化の一つです。
肥大した心臓は、早期なら薬で小さくすることができ、肥大したままの人と較べて明らかに予後が良くなります。一方で心肥大を放置すると、いずれ心不全などの病気につながり、命を落とす危険性が高まります。
心臓が肥大するとポンプ機能が低下するので、息切れや動悸の他、指で押してできた脚の凹みがすぐに戻らないような「ひどいむくみ」などの症状が出てきます。息切れは心肥大以外に心不全や心臓弁膜症などの心疾患でも出る症状。呼吸器系の異常から起きることもありますが、年配の方は「年齢のせい」と考えてしまいがちな落とし穴があります。
心臓の老化から起きる息切れには特徴があります。それは、安静にしていれば起きないけれど、労作時、特に階段や坂道を上ると息切れが起きる。そしてまた安静にすると収まっていく――という特徴です。この症状があるときは、心臓の老化に気付くチャンスなので、ぜひ医師に相談してください。
さらに心臓は、血管を通じて全身のあらゆる臓器と繋がっています。そして心臓の老化は、心臓自身が原因になるよりも、他の臓器の加齢による老化や疾患が元になり、その影響を受けて心臓も弱っていく――というケースも多いのです。
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