無差別テロが照射する格差と“正義”のおそろしさ
小説は衝撃的な事件からはじまる。日本最大級のコンベンションセンターでアニメの一大イベントが行われる日。長蛇の列を作るアニメファンたちに向けて、カートを押してあらわれた男が火炎瓶を投げ続ける。たまたまそこに居合わせた大学生、壮弥は思わずそれをスマートフォンで記録する。男は最後、自身に火をつけて自殺する。やがて無差別大量殺人を犯した男の身元があきらかになる。斎木均、41歳、無職。小学生のときにいじめに遭い、不登校になったことも報道される。
事件をニュースで見てもさほど興味を持たなかった銀行員、安達周はその名前をきっかけに、忘れていた過去を思い出す。斎木均は小学校の同級生だったのだ。安達自身はいじめに加担してはいなかったものの、きっかけを作ったのかもしれないと思いはじめる。いじめの過去と事件ははたしてつながっているのか。安達は独自に調べはじめる。
積極的に斎木をいじめていた真壁、事件の動画で一躍有名になった壮弥、事件で娘を失った厚子、話者を変えつつ、小説は斎木均の犯行動機をさぐっていく。しかし小説が読み手に抱かせる疑問は、犯人の動機を超えて、深く普遍的なものだ。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から
-
1カ月プラン
新規登録は50%オフ
初月は1,200円
600円 / 月(税込)
※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。
-
オススメ
1年プラン
新規登録は50%オフ
900円 / 月
450円 / 月(税込)
初回特別価格5,400円 / 年(税込)
※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2021年6月号