2つの祖国

オヤジとおふくろ

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著名人が父親との思い出を回顧します。今回の語り手は、冨山和彦(経営共創基盤グループ会長)です。

 私の父、冨山久二は昭和6年に和歌山からの日系移民2世としてカナダ、バンクーバーに生まれた。やがて日本と米英両国の関係が悪化する中、昭和16年の夏、10歳の時に家族とともに日本に戻っている。

 戦後、父は神戸大学を卒業して名門商社、江商に就職する。単身での海外勤務が多かった父と長く一緒に過ごす最初の機会が、昭和41年、西オーストラリアのパースに家族で駐在したときのこと。自分はまだ6歳だったが、中身は半分カナダ人の父、アーサー・トヤマは私をよく職場や鉄鉱石鉱山に連れて行った。

 その後、江商が経営危機に陥り、任期途中で帰国となる。他の大手商社からの誘いもあったようだが、まだ黎明期のコンピュータ用紙の会社、日本の凸版印刷とカナダのムーア社の合弁で設立されたばかりのトッパン・ムーア(現「トッパン・フォームズ」)へ。「2つの祖国」の父に合っていたとはいえ、あの時代によく決断したものである。同社は順調に成長を続け、父も創業世代経営者の一翼を長年担うことになる。ここでも中高生の私を海外出張などに連れて行き、香港、シンガポールなどで現地パートナーとのビジネス最前線の匂いをかがせてくれた。

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source : 文藝春秋 2021年8月号

genre : ビジネス 企業 ライフスタイル