著名人が母親との思い出を回顧します。今回の語り手は、田中慎弥さん(作家)です。
いまに至るまで、母は私の小説を、なんだか難しい、よく分らない、と言うばかりで一度も誉めたことがない。考えてみれば、難しい、というのはいわゆる純文学に対する世間一般の、感想でもあり批判でもあるだろう。母はそういう、世間一般の人間だ。ごく若い頃から世の中に出て、真面目に、まともに働き、自分の人生を作り上げてきた。その母から見れば、高校を卒業して以降、進学も就職もせずにぶらぶらし、親の金で本を買ったり映画を観たりしたあげく、小説を書いてそれをなりわいとする私などは、まさしく純文学並に意味不明、理解不能であるに違いない。
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source : 文藝春秋 2021年9月号