ジャーナリストの大西康之さんが、世界で活躍する“破格の経営者たち”を描く人物評伝シリーズ。今月紹介するのは、クリス・ラーセン(Chris Larsen、リップル共同創業者)です。
クリス・ラーセン
twitter@chrislarsensfより
「次世代のグローバル金融システムを構築する競争において、米国は中国に大きく後れを取っている」
米国の危機について警鐘を鳴らし続けている男がいる。仮想通貨「XRP(通称リップル)」の発行元であり、インターネットを介した国際決済・送金ネットワークの開発を手がけるリップルラボの共同創設者兼会長、クリス・ラーセンだ。
ブロックチェーンや仮想通貨をめぐる「米中の技術冷戦」において、中国政府は明確な規制環境を提供しており、インフラの構築、ビッグデータやAIなどの新興技術のイノベーションの促進で、米国を上回っている、というのがラーセンの主張だ。
2020年10月6日、米国のロサンゼルスで開かれたLAブロックチェーンサミットで、ラーセンはここまで踏み込んだ。
「中国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)は、米国よりはるかに進んでいる。中国はデジタル人民元を世界に広めることができ、国際市場において米ドルの優位性が損なわれる可能性もある」
しかし、米政府はラーセンの言葉に耳を傾けようとしない。
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source : 文藝春秋 2021年10月号