文在寅「慰安婦記念日」私はこう考える

韓国“発禁本”『帝国の慰安婦』著者インタビュー

朴 裕河 韓国・世宗大学教授
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日本への「謝罪と反省」要求が続く本当の理由は?(聞き手・ 黒田勝弘)

各地に建立される慰安婦像 ©時事通信社

 韓国で大きな反発を招き、半ば“発禁処分”となった1冊の本がある。「慰安婦問題」を扱った『帝国の慰安婦 植民地支配と記憶の闘い』(2013年/日本版は2014年)だ。著者は、韓国の世宗大学国際学部教授の朴裕河(パクユハ)氏(61)。2014年6月、元慰安婦たちが「名誉を毀損された」と著者の朴氏を民事・刑事で提訴・告訴し、出版差し止め(後に一部削除に変更)の仮処分を申請した。2015年2月、これを受けてソウル東部地裁が「34カ所の削除に応じない限り出版を差し止める」との決定を下し、同書は事実上の“発禁処分”となり、朴氏は名誉棄損容疑で在宅起訴された。
 民事・刑事ともに裁判が現在も続いている渦中の朴氏がソウル市内で本誌の取材に応じ、『帝国の慰安婦』をめぐる騒動の顛末と、日韓関係について語った(聞き手=黒田勝弘・産経新聞ソウル駐在客員論説委員)。

 黒田 僕は朴裕河さんのことを日本のメディアに紹介した最初の記者だと思います。それ以降、20年近い“朴裕河ウォッチャー”ということになりますね。

 朴 それはありがたいことです。こうして改まってインタビューに応じるのは初めてかもしれませんね。

 黒田 あなたは、近現代日本の文学・思想の研究者で、夏目漱石や大江健三郎、柄谷行人などの著作の韓国語翻訳を手掛けておられる。僕がなぜ“朴裕河ウォッチャー”になったかというと、あなたの韓国での知的挑戦に注目したからです。「日本に関する誤った“常識”が韓国社会にある。それが定着して後の世代まで事実として伝わってしまうのは良くない」。勇気を持ってそう発信し続けてきました。

 とりわけ慰安婦問題については、「日本軍が韓国の少女を数10万人強制連行して性奴隷にした」という言説が韓国の“常識”になっています。しかし、あなたは「それは事実と異なる」と主張してきました。これは韓国では相当、勇気と覚悟が必要で、知識人には腰が引けることです。そこで頑張っておられる。僕は保守派でリベラル系のあなたとは意見を異にする部分はあるんですが、それでも応援したいと思ったんです。最初の著書は『反日ナショナリズムを超えて』(2000年、日本語版は2005年)というタイトルでした。『帝国の慰安婦』も、その延長線上で書かれたものですよね。

 朴 そうです。ただ、次に書いた『和解のために』(2005年、日本語版は2006年)がそうだったように、日本への批判や問題提起も入っている点で『反日ナショナリズムを超えて』とは違うとも言えます。

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source : 文藝春秋 2018年10月号

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