農水省YouTuber

巻頭随筆

野田 広宣 農林水産省輸出・国際局
ニュース 政治 テクノロジー

「YouTuberになる職員募集!」というお知らせが農水省の職員ポータルサイトに掲載されたのは、2019年、自分が入省2年目の秋のことでした。なんと職員自らがYouTuberとなり、日本の農林水産物、農林水産業の魅力を動画で発信する企画が始動するとのこと。職員のスキルや個性を活かすため、省庁らしい制約もなし。プロジェクト名はBUZZ MAFFばずまふ。先輩職員とは「最近こんなことをやるんだねー」と笑っていましたが、内心は興味津々でした。もともと、日本や世界に国内の農林水産物の魅力を届ける仕事がしたいという思いで農水省に入った自分には、とても魅力的なチャンスに思えたからです。

 しかし1人で応募する勇気も、誰かを誘う勇気もありませんでした。そんな折、入省1年目の後輩だった白石(優生)君からラーメン屋で、「野田さん、やりませんか」と声をかけられました。二つ返事でOKし、かくして国家公務員YouTuberとしてのキャリアが始まったのです。

 BUZZ MAFFは全国から20弱のチームが選ばれるのですが、当時勤めていた九州農政局からは、自分と白石君の2名からなるチーム「タガヤセキュウシュウ」が活動することとなりました。初めての動画撮影は、本格始動を翌月に控えた2019年12月。熊本県の特産物「い草」がどう育つのか、会議室で白石君と説明する様子を撮影しました。自分は「何か面白いことを言わなきゃ……」と肩ひじを張っていたのですが、白石君から「素のままでいいですよ」と言われ、肩の力を抜きました。これで大丈夫かな、と当初は不安でしたが、自分が噛み噛みで話している素人ぶりを、もともと目立ちたがりやで、大学の学園祭で漫才を経験したことのある白石君が面白く編集してくれたんです。それを見て不安は吹き飛びました。

 以来、い草を植えるときに泥にはまって足が抜けなくなったり、白石君は少林寺拳法で世界第3位の農ガールから廻し蹴りを受けたり、企画を通して経験したことをそのまま伝えました。私たちだけでなく、上司や同僚も巻き込み、リアルな姿を撮ったのです。

 こうして2020年1月からタガヤセキュウシュウは少しずつ動画を投稿し、じわじわと再生回数を伸ばしていきました。一つの大きな成果が出たのが、20年3月に公開された「【BUZZMAFF】農水省から皆様へのお知らせ」。コロナ感染症拡大で需要が減少していた生花の消費を促す動画です。家や会社に花を飾ることで癒やされるなど効果を真剣に語りつつ、シーンが変わるごとに白石君と自分の周りに生花が増えていく。この演出が好評で2021年10月現在、96万回再生されています。YouTube活動を秘密にしていた友人から連絡があったほどで、驚きました。

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source : 文藝春秋 2021年12月号

genre : ニュース 政治 テクノロジー