日本人学校の児童を狙った殺傷事件が中国で立て続けに発生した。2024年6月には蘇州の日本人学校スクールバスが刃物を持った男に襲われ、止めようとした中国人女性が殺害された。9月には深圳で母親と一緒に登校途中の男児が刺殺されるという痛ましい事件が起きた。
私は大使在任中の23年5月に深圳の学校を視察しており、被害者男児に会っている可能性が高い。その意味でも、胸が張り裂けそうな憤りを感じている。
相次ぐ事件の背景には、中国のSNSに日本人学校がスパイを養成しているといった動画が氾濫していることがある。鬱屈を溜めた労働者などは、こうした煽動に乗せられやすい。私は大使在任中に中国当局に何度もこうした動画の削除を申し入れたが、聞き入れられなかった。中国当局は「個別の不幸な事案」として一連の事件を片付けようとしており、日本政府もメディアもそれ以上追及しないとなれば、また不幸が起きかねない。すると、今度は日本社会のほうで反中意識が高まるという悪循環に陥ってしまう。
しかしながら、「中国と断交せよ」といった極論は何も生まない。今回の事件発生後に数多くの中国人が涙ながらに献花しているのも事実だ。
決して「中国共産党=中国」ではない。中国共産党の政策をよしとしない人々は、中国にも数多くいるのである。
では、日本はどのような戦略をもって中国と対峙すればよいのだろうか?
近年、中国共産党幹部と信頼関係を結ぶことが難しくなってしまった。しかし、現在の体制が将来にわたって永遠に続くわけではない。ならば今のうちから将来の変化を見越し、次世代を担う改革派知識人や若手エリートとの関係強化に力を入れることが大切である。
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