選書したあとで気づいたのは、これらがみな、歴史の証言であると同時に、すぐれた文学でもある作品だということだ。
1948年にウクライナで生まれたアレクシエーヴィチは、ジャーナリストでありながらノーベル文学賞を受賞した書き手である。『戦争は女の顔をしていない』は彼女の第1作で、第2次大戦でソ連軍の一員として戦った女性たちへの聞き書きだ。話を聞いた従軍女性は500人をこえるという。彼女たちの1人称の語りを中心に、インタビュー時の情景描写が短くはさまれる。
ソ連では看護婦や軍医だけでなく、銃を持ち人を殺す兵員として女性が戦場に立った。アレクシエーヴィチはソ連の検閲官の〈我々には大きな物語が要るんだ。勝利の物語が〉という言葉にあらがい、徹底して個人の声を記録する。すると、取るに足りないとされてきた女性たちの体験のディテールから、闇に押し込められていた国家の秘密が顔をのぞかせるのだ。
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source : 文藝春秋 2022年1月号