『ゲゲゲの鬼太郎』『悪魔くん』などの人気漫画で、日本の妖怪文化を発掘した水木しげる(1922~2015)。連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」の原作者で知られる妻の武良布枝氏が水木の晩年を語る。
武良さん
水木が生きていれば、2022年に満100歳を迎えていました。「オレは100歳はいけるネ」が口癖で、90を過ぎてもよく食べ、よく歩きました。心不全で倒れたときは、快復しないと思うほど痩せたのが、半年たつと顔がふっくらして元気な姿に戻りました。いつも明るく、「夫は死なない人間だ」と思っていたのに、6年前の秋、ころりと逝きました。
朝、ベッドからトイレへ向かう途中で転倒し、頭を打ったのです。救急搬送された病院で硬膜下血腫と診断され、頭蓋骨を開ける緊急手術を受けました。2週間後には集中治療室から一般病棟へ移ることが決まり、娘たちと「お父ちゃんが帰ってきたらこうしよう」と話し合っていました。ところが、深夜に病院から電話があり、長女が駆けつけてすぐ危篤になりました。水木は生前「最期は虫や動物のように自然に死にたい」と書いていたので、延命治療は断り、私と次女が到着したのは、息を引き取ったあとでした。
水木しげる
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source : 文藝春秋 2022年1月号