日本の経済の中心地、東京・丸の内。敏腕経済記者たちが“マル秘”財界情報を覆面で執筆する。
★Wスタンダードの是非
帝国データバンクによるとロシアに進出している168社のうち、3社が完全撤退を表明した(4月11日時点)。
完全撤退を決断したのは丸亀製麺(山口寛社長)を運営するトリドールホールディングス(粟田貴也社長兼CEO)、複合エンターテインメント施設を展開するラウンドワン(杉野公彦社長)、自動車向け熱交換器製造大手ティラド(宮﨑富夫社長)の3社だ。
丸亀製麺は3月末までにロシア国内7店舗の閉店を決めたが、フランチャイズ契約を結んでいる現地のFCが看板を「マル」に掛け替えて、まったく類似のメニュー、値段で営業を継続している。日本側は営業の停止を求めているが、応じる気配はないという。
ロシアでの事業継続に対する消費者や投資家(株主)の視線は厳しさを増す。消費関連企業はブランドイメージの毀損に十分に配慮しないと株価の急落を招いてしまう。
JETRO(日本貿易振興機構)によるとロシアには211社が進出。なかでも注目はJT(日本たばこ産業、寺畠正道社長)の動向である。実は、JTはたばこメーカーとしてロシア最大のシェアを誇る。
1999年、米大手RJレイノルズ(当時RJRナビスコ)から米国外事業を買収してロシアに進出すると、2007年にはロシア市場に強かった英ギャラハーも買収。紙巻の「ウィンストン」や「キャメル」、加熱式の「プルーム」などを展開し、ロシア市場でシェア首位に立つと、現在までその座をキープしている。
ロシアとウクライナなど旧ソビエト連邦の周辺国で構成する「CIS+」セグメントは、全社の営業利益の2割を占めるドル箱市場だ。
エネルギー問題と同様、制裁強化と市場維持のダブルスタンダードの立場をとるのか。寺畠社長の姿勢が問われている。
★電力自由化の岐路
新電力と呼ばれる電力小売り業者の倒産が急増中だ。昨冬からの市場価格高騰に加え、ウクライナ侵攻による燃料価格の上昇が重なり、発電設備を持たない新電力の経営を直撃したためだ。
電力小売り事業からの撤退や新規申し込みの停止が相次いでおり、新電力700社のうち4.4%にあたる31社が過去1年間で倒産や廃業・事業撤退している。
新電力各社は調達コストの上昇分を販売価格に十分に転嫁しきれていなかった。事業者向けの価格は家庭用に比べて安価に設定されており、調達価格が販売価格を上回る逆ザヤ状態になっている事業者も多かった。
今年3月には東証グロース上場のホープ(時津孝康社長兼CEO)子会社で電力小売りのホープエナジーが300億円の負債で破産を申請。ホープエナジーの電力契約先は自治体や公共施設など5000施設に及び、自治体などは新たな契約先の確保に追われている。
エイチ・アイ・エス(澤田秀雄会長グループCEO)は新電力子会社の譲渡に向け、最終協議に入ったと発表した。またウエストホールディングス(江頭栄一郎社長)、エルピオ(牛尾健社長)は、4月末でそれぞれ業務撤退、サービス停止に追い込まれている。
新電力が破綻する一方で、東京電力ホールディングス(小早川智明社長)など大手電力が、燃料価格や電力調達価格の高騰により追加の供給力が確保できないとして、相次いで法人向けの新規契約を事実上停止する事態も生じている。
「電力自由化といえども発送電を完全分離しなければ、大手電力が圧倒的に優位な立場がつづく。卸電力の価格が高騰すれば、新電力はすぐに赤字に転落してしまう」(アナリスト)
小売り契約を結べない上場企業も出てきており、電力自由化制度が根底から崩れかねない事態となっている。
★村上世彰氏の買い占め
石油元売り第3位のコスモエネルギーホールディングス(桐山浩社長)が窮地に立たされている。あの村上世彰氏に株を買い占められているのだ。関東財務局に提出された大量保有報告書によれば、村上氏が実質支配する「シティインデックスイレブンス」が買い占めを始めたのは2月中旬のこと。長女・野村絢氏の名義分も合わせ、4月20日時点で保有割合は8.3%に上る。投下資金は200億円近い。
村上氏
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source : 文藝春秋 2022年6月号