「国民の幸せを増やすこと」こそ究極の目標だ(聞き手・浪川 攻)

私は、金融が経済や国民生活に及ぼす影響は極めて大きいと考えています。かつて、日本のバブル崩壊やリーマンショックが起こった際、金融の混乱は日本経済や世界経済に大きな打撃を与えました。他方で、健全な金融システムは経済発展の基礎となります。
ただ、日本では「金融機関の活動が国民の資産形成を助けているか」「顧客企業の成長に役立っているか」という問題については未だ改善の余地が大いにあるでしょう。手数料稼ぎのために顧客の利益をないがしろにしたり、債権の保全を優先して顧客企業の成長を阻害したりする金融機関があることは否定できません。結果として、金融機関自身も長い目で見れば自らの価値を向上させることが出来ず、金融資本市場は活性化してきませんでした。日本ではこうした最適とはいえない均衡状態が続いてきたのです。また、そのような状態にさせた責任の一端は金融庁の行政にもあるのではないでしょうか。
こうした望ましくない状況から脱し、金融と経済の好循環を実現させ、経済の発展と国民の厚生の増大に繋げていきたい――。私はそう考えているのです。
2015年7月の就任以来、森信親・金融庁長官(61)は、しがらみに囚われない金融行政改革を次々と打ち出してきた。そして、昨年7月には3期目を迎え、改革にラストスパートをかけつつある。
森長官は1期目の半ば頃に本誌に登場し(2016年5月号「銀行は『半沢直樹』を見習え」)、自らが進めていく金融行政改革の大前提として、〈まずは金融庁から先陣を切り、体質を変えていかなければいけない〉と述べていた。
あれから約2年、“森改革”はどれほど進んだのだろうか。
「国のため」に働ける組織づくり
長官就任からの2年半の間、「金融行政のあり方」から「金融機関が販売している商品の内容」まで、私は様々な課題設定をしてきました。
金融庁の職員は、非常によく応えてくれました。
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source : 文藝春秋 2018年04月号

