日本の戦後の経済発展は、自動車産業の発展抜きには考えられない。
自動車帝国の米国を日本が追い上げ、それを抜き去る第2次世界大戦後の“経済逆転”は、かつてデイビッド・ハルバースタムが『覇者の驕り 自動車・男たちの産業史』(日本放送出版協会、1987年)で鮮やかに描いたところである。
それから30年、世界は日米欧に中国を加え、電気自動車(EV)戦国史に突入しつつある。より正確に言うと、CASEをめぐる闘争といってよい。CASEとはConnected,Autonomous,Shared&services,Electricの頭文字である。車がインターネットにつながり、自動で走行し、シェアリング・サービスとなり、そして電気駆動となるモビリティー産業をどの国が支配するのかの闘争である。
ここまでのところ、CASEを技術面で引っ張っているのはシリコン・バレーを擁する米国である。その象徴が、稀代の起業家、イーロン・マスク率いるテスラである。
しかし、EVの生産台数ではすでに、中国が世界の過半を占めている。中国は、二酸化炭素(CO2)の排出量を減らす必要性とともに、それを「中国の夢」をかなえる国家威信事業として位置づけている。ガソリン車では到底、日米欧に追いつけない。カエル跳びして自動車産業のパラダイム・シフトを仕掛けようとしているのだ。
その際、欧州の自動車メーカーを抱きこもうとしている。欧州では、ドイツを中心にディーゼル車の排ガス不正問題を機に、一気にEV(ないしはプラグイン・ハイブリッド=PHEV)へのシフトを迫られている。そこに中国は手を差し伸べた形だ。フォルクスワーゲンもダイムラーも中国の自動車メーカーとEV開発・生産の合弁をつくることを発表した。
EV戦国史における中国のレバレッジは3つある。
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source : 文藝春秋 2018年03月号