東南アジア諸国連合(ASEAN)の中国に対する姿勢がこの1年で劇的に変化した。
それを端的に物語るのが昨年11月、フィリピンのマニラで開かれたASEAN首脳会議の声明である。南シナ海問題について、人工島造成で軍事拠点化を進める中国を念頭に「非軍事化と自制の重要性を強調する」と明記したが、過去の声明で示してきた「懸念」の一語が消えた。
ASEANは、西沙諸島の近海で中国が石油掘削をしていた2014年5月の首脳会議の議長声明で「深刻な懸念」を表明して以来、一貫して「懸念の維持」や「懸念を共有」を表明してきた。
ところが、昨年4月の首脳会議の声明では、「一部の首脳によって表明された懸念に留意する」とトーンダウンした。カンボジアが「懸念」の言葉を盛り込むことに強く反対した結果である。
さらに8月の外相会議の際の内輪の会合では、南シナ海での各国の行動を規制する「行動規範(COC)」に法的拘束力を持たせるか否かをめぐって、持たせるべきだと主張するベトナムとマレーシアに対してフィリピンが反対し、結局、外相会議は法的拘束力の明記を見送った。
この会議のあと、ナジブマレーシア首相が同国外相に電話を入れ、彼の発言が反中と見られかねないとして叱責した。カンボジアとラオスが中国に告げ口をし、中国がナジブに苦情を呈した。このほど訪れたマニラの事情通の打ち明け話である。
彼は付け加えた。
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source : 文藝春秋 2018年02月号