少数民族はなぜ中国政府に従わないのか
今日の中国は「民族問題」を抜きには理解できません。共産党政権は、少数民族への圧迫を強めていますが、これに対し抗議デモやテロ事件が起き、少数民族の問題は、中国の国家としての安定と安全保障を脅かす要因となっています。少数民族の多くは、外部と接する国境地帯、周辺地域に存在しているからです。
少数民族というと日本でもチベット族はよく知られていますが、中国には、大多数を占める漢族も含めて56もの民族が存在しています。とくに潜在的に“独立国”となりうる自律性と規模を備えているゆえに北京政府が注視しているのは、チベット(自治区)のほか、モンゴル(内蒙古自治区)やウイグル(新疆(しんきょう)ウイグル自治区)です。
中国政府が提唱している「一帯一路」構想。すでに中国からドイツまで貨物列車が運行されていますが、この鉄道は、新疆ウイグル自治区の真ん中を横切って中央アジアへと向かっています。また、中国は、チベットからネパールの首都カトマンズに至る鉄道建設をネパール政府と協議していますが、これにインドは警戒感を示しています。中国とインドは、常に緊張関係にありますが、その間に位置するチベットは、この二大国の間で不安定な状況に置かれているのです。つまり、少数民族の住む地域は、現在の中国にとって重要な土地ばかりなのです。
たとえば日本で、「日本と中国はもともと同じ漢字文化圏にあったのだから、同じ東アジアの一員として、日中友好を進めるべきだ」と言われるとき、おそらく、こうした少数民族の存在は視野に入っていません。中国の少数民族問題は、日本からは、とても見えにくいのです。日本で日中関係を論じる際の思わぬ死角となっています。
中国の民族問題の起源
現在の中国共産党政権が、少数民族に対する弾圧を強め、この問題を解決不可能なほどに深刻化させているのは事実ですが、実は、中国共産党の独裁体制だけが中国の少数民族問題をつくりだしたわけではありません。この問題の起源は、別のところにあります。
少数民族問題の本質を理解するには、歴史をさかのぼり、とくに満洲族が作った清朝の歴史から現代を眺める必要があります。「中国」の王朝の中でも清朝時代の版図は、史上最大でしたが、これが、現在の中国が主張する領土の根拠になっているからです。
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source : 文藝春秋 2017年11月号