日中の若者の価値観は限りなく近づいている
「僕の小説が中国の方に受けるんでしょうか?」
又吉直樹さんに初めてお会いしたのは昨年12月末、新宿の劇場「ルミネtheよしもと」の控え室でした。私と向かい合った又吉さんは、半信半疑でそのように尋ねたのです。
ちょうどその頃、『火花』の中国語翻訳の話が進んでおり、私が翻訳の担当者に決まっていました。せっかくの機会なので、私が編集長を務める雑誌『在日本』で又吉さんへのインタビューをお願いしたのです。
「まさか『火花』が海外で読んでもらえるとは思っていなかったので、正直、外国の方が読むことを想定して書いてはいません」
冒頭の発言に加えて又吉さんはそう口にされましたが、私はその問題は全く感じていませんでした。今年で日中国交正常化から45年。近年、領土問題により日中関係は悪化しています。昨年の日中共同世論調査でも、「日本に良くない印象を持っている」と答えた中国人は7割を超えました。その一方、実は中国の若者の生活や価値観は、限りなく日本に近づいているのです。文学においても同じで、『火花』の舞台は東京ですが、登場人物を中国の若者に置き換えてもなんの違和感もない。中国での翻訳出版は「絶対に成功する」という確信がありました。さらに、販売促進のために、実際に著者本人を中国へ連れていってはどうかという案まで考えていたのです。
ですから、インタビューの終わり際、又吉さんが発した言葉は今でも忘れられません。
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source : 文藝春秋 2017年11月号