国際政治において新興国が覇権国に取って代わろうとするとき、大きな戦争が起こりやすい。それを「ツキジデスの罠」と名付けるグレアム・アリソン米ハーバード大学教授の著書『米中戦争の時 覇権国と新興国を衝突させる歴史の法則』(ダイヤモンド社=近く出版)が世界的反響を呼んでいる。
アリソンの問題関心は、急激に台頭する中国が、戦後の覇権国の米国を激しく追撃するパワー・シフトが、最後には米中戦争を引き起こすリスクのありかと、それを回避する方策を提示することにある。
「ツキジデスの罠」は、紀元前5世紀、古代ギリシャ世界において、内陸指向国家で覇権国のスパルタが、急激に勃興する都市海洋国家のアテナイに恐怖心を抱き、戦争に至ったペロポネソス戦争を記述した歴史家のツキジデスに由来する。
「アテナイの興隆とそれがスパルタに与えた恐怖、それが戦争を不可避とした」
ツキジデスは、そのように断じた。新興国の自信過剰とおごりと覇権国の自信喪失と恐怖感、追う者と追われる者とのこうしたゼロ・サム心理こそが、パワーの均衡と安定の最大の敵、つまり「罠」だというのである。
アリソンは、過去500年の間に起こった16の覇権争いの原因を究明した結果、12までが「ツキジデスの罠」で説明できるとの結論に達した。
この夏、中国・大連で開かれたダボス会議に出席した際、アリソンのこの本のプレゼンを聞きに行った。満員御礼である。
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source : 文藝春秋 2017年10月号