ツキジデスの罠

新世界地政学 第74回

ライフ 政治

 国際政治において新興国が覇権国に取って代わろうとするとき、大きな戦争が起こりやすい。それを「ツキジデスの罠」と名付けるグレアム・アリソン米ハーバード大学教授の著書『米中戦争の時 覇権国と新興国を衝突させる歴史の法則』(ダイヤモンド社=近く出版)が世界的反響を呼んでいる。

 アリソンの問題関心は、急激に台頭する中国が、戦後の覇権国の米国を激しく追撃するパワー・シフトが、最後には米中戦争を引き起こすリスクのありかと、それを回避する方策を提示することにある。

「ツキジデスの罠」は、紀元前5世紀、古代ギリシャ世界において、内陸指向国家で覇権国のスパルタが、急激に勃興する都市海洋国家のアテナイに恐怖心を抱き、戦争に至ったペロポネソス戦争を記述した歴史家のツキジデスに由来する。

「アテナイの興隆とそれがスパルタに与えた恐怖、それが戦争を不可避とした」

 ツキジデスは、そのように断じた。新興国の自信過剰とおごりと覇権国の自信喪失と恐怖感、追う者と追われる者とのこうしたゼロ・サム心理こそが、パワーの均衡と安定の最大の敵、つまり「罠」だというのである。

 アリソンは、過去500年の間に起こった16の覇権争いの原因を究明した結果、12までが「ツキジデスの罠」で説明できるとの結論に達した。

 この夏、中国・大連で開かれたダボス会議に出席した際、アリソンのこの本のプレゼンを聞きに行った。満員御礼である。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
今だけ年額プラン50%OFF!

キャンペーン終了まで時間

月額プラン

初回登録は初月300円・1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

オススメ! 期間限定

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

450円/月

定価10,800円のところ、
2025/1/6㊊正午まで初年度5,400円
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2017年10月号

genre : ライフ 政治