皇室の行く末を決めた7カ月を振り返る
退位に関する有識者会議は、今年4月に最終報告をまとめ、その役割を終えました。私は座長代理としてスポークスマンを務めましたので、会議後の記者会見などで見かけた方がいるかもしれません。
今回は「天皇の退位」について話し合うまったく前例のないものでしたから、7カ月にわたる議論も手探りにならざるを得ないこともありました。ただ、現時点では、最良の報告書をまとめることができたのではないかと考えています。国民的な関心を集めた有識者会議とは一体どのようなものだったのか。議論が一段落したこともあり、可能な範囲でお話しようと考えました。
4月21日、「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」は最終報告を安倍晋三首相に提出した。「報告」では、天皇の退位を認めることと、皇室典範の改正でなく特例法の制定によって退位できるようにすることが提言された。また、退位後の天皇と皇后はそれぞれ上皇、上皇后と呼ばれること、秋篠宮さまは「皇嗣(こうし)殿下」と呼称されることなどが合わせて提案された。
昨年8月、天皇陛下ご自身が高齢のため退位を強く望まれていることをビデオメッセージで発表されました。私がこのお言葉をうかがって、最初にピンとひらめいたのは「微妙だな」という感想でした。
私は政治学の研究をしてきた人間です。天皇の政治的行為はいうまでもなく憲法違反。学者という立場からすると、陛下がお考えを自ら表明して政治を動かすような事態はとても望ましいとは言えません。
陛下はメッセージの中で退位を希望された上で、摂政を置くことは否定的に述べられました。さらに、象徴として自分がやってこられたことを縮小することは「無理」ともおっしゃった。象徴天皇としてギリギリのおつもりだったのかもしれませんが、相撲の判定にたとえるなら土俵からちょっと足が出たかなと感じたのです。
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source : 文藝春秋 2017年07月号