マカオ取材 金正男「酒宴と愛人」最後の日々

朴 承珉 ジャーナリスト
ライフ 韓国・北朝鮮

100回以上酒を飲んだ親友が明かす

金正男氏 ©時事通信社

「酒に酔うと、『故郷に帰る船』という韓国の演歌を物悲しい声で歌っていたよ。カラオケで10回も続けて歌ってから、涙を流したこともあった」

 マカオ在住の韓国人実業家の李東燮(イドンソプ)さんは、そう振り返る。2月13日にマレーシアのクアラルンプール国際空港で殺害された金正男氏(45)の、20年に及ぶ知人だ。

『故郷に帰る船』は、韓国の人気歌手・羅勲児(ナフナ)が1982年に歌ったヒット曲だ。♪故郷に帰る船、夢を乗せた小舟、故郷へ帰りましょう♪ と訴えかける歌詞に、正男氏は自らの境遇を重ね合わせたのだろうか。

 正男氏は1997年、一定額以上の投資を条件に市民権や永住権を得る「投資移民」として、家族と共にマカオへやって来たといわれる。高級マンションに住んで子供たちを学校に通わせ、自らは韓国クラブや韓国料理店、カジノに出入りした。交際範囲が広がることを望まなかったが、親しく付き合う知人もいた。

 筆者は2月の事件直後と3月上旬の二度、金正男氏が20年暮らしたマカオで、その素顔を知る人たちを訪ね歩いた。

 右の証言をしてくれた李さんは60代で、「マカオ韓国人会」の会長を27年にわたって務めた有力者。正男氏の暮らしぶりや家族について、もっともよく知る人物の1人だ。昨年までマカオ司法警察局のテコンドー教官を務めていた関係もあって、さまざまな情報にも通じている。

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source : 文藝春秋 2017年05月号

genre : ライフ 韓国・北朝鮮