20代から170頭以上所有してきた
私は所有している競走馬を自分の子供だと思っています。だから、レースは子供が出る運動会と同じで、まずは無事に走ってきて欲しい。そして欲をいえば、1等賞を取ってくれたら、もっと嬉しい。そんな気持ちで馬をいつも見ています。
昨年は、愛馬のキタサンブラックがとてつもなく大きな夢を見せてくれました。春には伝統と格式のある天皇賞、秋にもGⅠレースの最高峰の1つであるジャパンカップで勝ってくれた。最近では競馬場に行くと、私よりも彼のほうが人気者になっています(笑)。
私は常々「暮れの有馬記念は競馬界の紅白歌合戦だ」と言ってきました。昨年、その有馬記念でキタサンブラックがポンッと飛び出して、先頭で直線コースに入りそのまま逃げ切れると思いました。ゴール直前で「勝った!」と思い、双眼鏡から目を離したとたんに、サトノダイヤモンドにかわされて2着になってしまった。それでも、あれだけ強い馬たちと戦って、2着だったのですから立派。現在、キタサンブラックは、休養をとっているところです。
その間に、「年度代表馬」に選出されるというニュースが飛び込んできました。年度代表馬はさしずめ歌手なら紅白の大トリを務めるようなもの。私自身は歌手として音楽関係の賞をたくさんいただいてきましたが、所有馬が賞をいただいたのは初めて。今は、幸せな気持ちでいっぱいです。
きっかけは春日八郎さん
歌手の北島三郎氏が競馬界で大きな注目を集めている。所有する競走馬のキタサンブラックが、一昨年の菊花賞に続き、昨年は天皇賞(春)、ジャパンカップなどの大レースを次々と制覇。ファン投票で出走馬が選出される有馬記念では、第1位の13万7000票を獲得するなど、いまや競馬人気を牽引する存在となった。
また、レースに勝利すると北島氏が競馬場で「まつり」を熱唱する姿がメディアで報じられ大きな話題となっている。その北島氏が50年を超える馬主人生を語った。
馬との出会いは子供の頃にさかのぼります。実家が北海道の片田舎だったので、農耕馬がいたんです。馬に乗って遊んだり、馬を使った作業を手伝ったりしていたので、馬は私にとって身近な存在でした。
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source : 文藝春秋 2017年04月号