爆心地では70%の人が即死、20%が2カ月以内に死亡する
2011年3月15日。福島第一原子力発電所で爆発が起こり、放射性物質の大気への拡散が本格的に始まっていた。当時の首相官邸は、その拡散状況を国民に知らせることができなかった。一方、米国のエネルギー省が独自調査の結果、〈高濃度放射性物質が北西へ重点的に飛散〉とする拡散予想モデルを日本の外務省ほか、各機関に伝達していた。
しかし、その裏で、米軍による別の極秘調査の結果が防衛省ほか、複数の機関に届けられたにもかかわらず、官邸に報告されていなかったことはまったく明らかにされていない。
その調査結果の発信元は、略称「DTRA」。日本語にすれば「米国防脅威削減局」。VXガスなどの化学兵器、天然痘ウイルスなどの生物兵器、そして核爆弾など大量破壊兵器による攻撃から、米国と同盟国を守るための作戦の立案と遂行に徹した部局である。
DTRAは国防総省の数ある部局の中でも、最も重要な存在とされている。なぜなら、任務の神髄は、大量破壊兵器による攻撃を受けた後も国家を存続させることだからだ。特に、外国やテロ集団からの「核攻撃」に対しては、いかに備え、対抗し、その脅威を破壊するかが任務の根幹である。「核攻撃」は、経済、政治、社会という、国家として成り立っている機能を崩壊させてしまうからだ。
6年前、DTRAは、無人偵察機などを駆使して原発から放たれる核物質の情報を収集し分析。その結果、前述のエネルギー省のものよりさらに詳細なデータだけでなく、12時間ごとに、首都圏が「核物質の雲」に徐々に覆われていく予想モデルも防衛省など一部の政府機関に伝達していた。
北の“脅威の再評価”
本稿は、当時の官邸の判断や動きを検証することが主旨ではない。国家的緊急時であった東日本大震災のころ以上に、DTRAの存在が、ここ数カ月、日本という国家の存続に重要なものとして再び急浮上している、そのことに大きな関心を寄せたいからである。
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source : 文藝春秋 2017年02月号