私が見た安倍・プーチン会談

日露経済協力は北方領土返還につながるか

世耕 弘成 経済産業大臣
ニュース 政治 ロシア

 12月15日に向けた手応えを側近が明かす

9月2日、ウラジオストクで握手 ©時事通信

 12月15日に予定されているプーチン大統領の訪日を控え、長年懸案となってきた日露平和条約締結や北方領土問題解決への期待が日増しに高まっている。そのための土台となるのが、目下急ピッチで進められている日露経済協力だ。自民党きってのロシア通として知られる世耕弘成経済産業大臣が、意気込みと展望を語った。

 9月1日に、私は8月からその任に就いた経済産業大臣に加えて、ロシア経済分野協力担当大臣も拝命しました。翌日から安倍総理と一緒にロシア・ウラジオストクで行われる東方経済フォーラムに出席し、プーチン大統領との首脳会談にも同行することになっていましたので、一部では「ロシア経済分野協力担当大臣の新設は、ロシアへの強烈なメッセージだ」とする報道も見られました。しかし、実際のところをお話しすれば、決してそうではありません。

 8月頭に経済産業大臣に任命された際、安倍総理からは、「君は官房副長官として、対ロシアの経済協力プランの取りまとめをやってきてくれた。その経済協力プランにあるプロジェクトの8割方は、経産省案件だ。だから、今度は経産大臣になって引き続きロシアとの経済協力プランについてしっかりと主導していってほしい」と言われたのです。

 そこで8月から早速仕事を始めたのですが、1つ不便なことが出てきました。例えば農業に関するプランなら農水省、医療関係なら厚労省、インフラ整備なら国交省といった具合で、日露の経済協力というのは、実に様々な省庁と緊密に連携する必要があるわけです。前任の官房副長官の場合、各省庁との調整は法律上も職掌の範囲内でしたから自由にそれができましたが、経済産業省という1つの省のトップとなった途端に他省庁との調整ができなくなってしまったのです。「これはちょっと困ったな」と官邸側と相談をするなかで、「ではロシア経済分野協力の担当大臣を発令すれば、他の省庁との調整権を持つことができるじゃないか」ということになった。極めて事務的な、必要に迫られた中でのアイディアでした。ですから、正直なところ、政治的意図というものはまったくありませんでした。ただ、それがニュースになるとやはり政治的に捉える向きがありましたし、実際、ロシア側もそうした見方をしたようです。しかし、「担当大臣を新設するほど、日露経済協力に本気なんだ」というのは悪いメッセージではありませんし、嘘でも何でもありませんから、「結果オーライ」で良かったかなと思っているところです。

今井氏と長谷川氏の役割

 そもそも私が日露関係に積極的にかかわるようになったのは、11年前のことでした。第三次小泉改造内閣で現安倍総理が内閣官房長官に就任された直後の05年に「日露若手国会議員の会」を立ち上げたのです。当時、日露の政治家の交流と言えば、清和会の大先輩でもある森喜朗元総理の個人的な人脈だけが頼りといった状況でした。私としては、若手の政治家レベルでの日露交流の一翼を担うために、森元総理のパイプとは別に、いつでも意見交換できる議員間の信頼関係を作りたいと考えての行動でした。

 幸いなことに、一般社団法人日本青年会議所の「日ロ友好の会」が、事務局を務めるなど、全面的にバックアップしてくれました。松山政司氏(現自民党参院国対委員長)や野上浩太郎氏(現官房副長官)ら自民党参議院議員を中心に、西村康稔氏(現自民党総裁特別補佐)ら衆議院議員も一部加わって、数人の国会議員が中心メンバーとなり、毎年モスクワを訪問したり、逆に向こうの国会議員を招いたりという議員交流を続けてきました。

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source : 文藝春秋 2016年11月号

genre : ニュース 政治 ロシア