なぜこの機会に誤報を検証し直さなかったのか
昨年12月28日、慰安婦問題に関しての日韓合意が成立した。だが、それを報じる朝日新聞の紙面に驚きと憤りを隠さないのが元朝日記者の長谷川熙氏(82)だ。
長谷川氏は1961年に朝日に入社。静岡、新潟支局や経済部などを経て88年に「AERA」創刊に参加。93年の定年退社後も同編集部にデスクを置いて数々のスクープを放ち、傘寿を超えてなお健筆をふるってきた名物記者だ。だが2014年8月5日・6日付朝日の「慰安婦問題を考える」と題した検証紙面に絶望し、朝日新聞社を離れて1人、この問題にけじめをつけるべく取材を続けてきた。その成果がまとめられたのが、奇しくも日韓合意の翌日に刊行された『崩壊 朝日新聞』(以下『崩壊』)である。
一方、朝日の慰安婦報道について、90年代前半から誰よりも早く警鐘を鳴らしてきたのが、東京基督教大学教授の西岡力氏(59)だ。2人の対話から見えてきた、慰安婦問題における朝日の責任とは――。
長谷川 日韓合意の翌日、12月29日付の朝日の朝刊を見て、大変驚きました。1面から2、3、4面のほとんどを使い、7面では年表付きで経緯をまとめ、8面では有識者の声を紹介。さらに社説、社会面トップでも扱うという大々的な報道でした。しかしながら、慰安婦問題が日韓の間でここまで深刻化した原因が朝日自身にあることには、ただの一言も触れていないのです。
西岡 実は28日、朝日の旧知の記者から電話がかかってきて私もコメントを求められました。そこで私は「慰安婦問題は、朝日新聞をはじめとする日本のマスコミの誤報と日本政府の安易な謝罪が原因であり、その点に踏み込んでいない」ので「本質的解決には程遠い合意だ」などと話したのですが、翌日の紙面では「朝日新聞をはじめとする」の部分抜きの短いコメントになっていました。
長谷川 繰り返され続けた朝日の虚報が韓国の反日を煽り、日韓関係を収拾がつかないくらいに険悪化させてしまったその経過を検証し、この合意を機会に日韓両国民に深く謝罪するべきであったのに、まったく知らん顔で通してしまった。
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source : 文藝春秋 2016年03月号