カジュアル化の時代だからこそ際立つ、クラシックスーツの存在感。なかでも再評価の気運が高まっている、グレースーツの奥深い魅力を紹介しよう。
写真=川田有二、スタイリスト=四方章敬、撮影協力=九段ハウス
Brunello Cucinelli(ブルネロ クチネリ)
ツイードのイメージを覆す極上の手触りが自慢の、カシミア混ウールを使ったスーツ。イタリア仕立て特有の肩まわりのソフトなラインと、メリハリの効いたシルエットは、着る人を知的に、かつ若々しく見せてくれる。スーツ¥649,000、シャツ¥59,400、タイ¥26,400、チーフ¥29,700/以上ブルネロ クチネリ(ブルネロ クチネリ ジャパン☎03-5276-8300)
グレーとは、 成熟した紳士の色
着る人の個性を引き出す グレーの豊かな階調
季節感の感じられない黒い化繊生地や、スポーツウエアのような簡素な仕立て……。合理主義やミニマリズムの名の下に、すっかり没個性化してしまったビジネスウエアの世界。しかしだからこそ、感性豊かなビジネスエリートたちは、往年の紳士たちが着ていたようなグレーのクラシックスーツに、再評価の眼差しを向けている。
江戸時代には“四十八茶百鼠”と謳われたように、無限の階調をもつグレーという色。その豊かで成熟した表情は、スリーピースやダブルブレストに代表される古典的なデザインとの融合によって、袖を通す人の個性を遺憾なく引き出してくれるだろう。
名宰相・吉田茂のようにドレッシーに装うもよし。ニットを合わせて、カジュアルに崩すもよし。グレースーツの風格は、装うことの喜びを、あなたにもう一度実感させてくれるはずだ。
日本が誇る宰相、吉田茂(1878〜1967)。“和製チャーチル”と呼ばれた吉田は、ウィンストン・チャーチル御用達の老舗テーラー、ヘンリープールの顧客でもあった ©Everett Collection/Aflo
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source : 文藝春秋 2022年11月号