携帯電話も持たず24時間スケート生活。「俺は一流になりたい」と語る18歳の素顔は──
昨年秋、弱冠十七歳にして男子ショートプログラム(SP)の世界最高得点をたたき出し、年末には自身初の全日本王者に輝いた羽生結弦(はにゅうゆづる)。
フィギュアスケート界の新星は、カナダ・トロントで長い冬を越している。トロントの冬は気温氷点下の毎日が続き、仙台市出身の彼でも寒さを感じるほどだ。トロントに来て十カ月。英語はまだ苦手で、悩みを相談できるカナダ人は周囲にいない。外食は好まず、母親が作ったご飯しか食べない。携帯電話を持っていないので、日本の友人と電話で話すこともない。十八歳の若者にとって孤独な寒々しい冬をつい想像してしまうが、彼にとっては熱く心の燃えたぎる冬だという。
「今は頭からスケートが離れなくなっている状態です。一〇〇%スケートです。友達からメールが来なくても気になりませんよ。だってスケートに関係ない事だから。携帯は今まで持ってなかったので、今更持ってどうするのという感じです」
羽生は、“どこがおかしいの”と問い返すように飄々とそう答える。
実際、トロントでの羽生の生活は、リンクを離れてもフィギュアスケート一色だ。それは羽生家の「家族会議」に垣間見える。家族会議とは、スケートのビデオを見ながら自身のフォームを研究したり、ライバルから盗める事はないかと目を光らせたりする戦略会議のことを指す。今は母親と二人でトロントのマンション暮らしをしているため、練習を終えて家に帰ると、二人で家族会議をするのだそうだ。
「母はスケートのことを理論的に分かっているわけではないですが、逆に詳しく知らないぶん、感覚的なアドバイスをしてくれる。それがまた意外な視点だったりして参考になるんです」
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source : 文藝春秋 2013年04月号