決断こそ我が使命

総力特集 日本人「最後の決断」

野田 佳彦 元内閣総理大臣
ニュース 政治 経済

バラまき型の古い政治に逆戻りするのか。極論で国民の歓心を買う政治は危うい

野田佳彦内閣総理大臣 ©文藝春秋

 ――まずお聞きしたいのは、十一月十六日、なぜこのタイミングで歴史的解散を決断されたのですか。

 野田 国民の皆さんの前で誓った「近いうちに信を問う」という約束を守るためにも、国民の信を新たにし、日本の政治をさらに前に進めていくためにも、必ず下さなければならない決断でした。

 その二日前。党首討論の場での突然の解散表明に驚かれた方も多かったに違いありません。異例の形式で「伝家の宝刀」を抜いたのは、政権与党の党利党略ではなく、現下の動かない政治を少しでも前に動かすために、この最後の手段を使わなければならないと考えたからに他なりません。

 十月末に臨時国会が始まりましたが、言論の府たるべき国会の状況は、暗澹たるものがありました。野党は、参議院で私の所信表明演説を聞くことすら拒否しました。憲政史上に汚点を残す暴挙です。今年度の予算を裏付けるはずの特例公債法案は、予算の成立から半年以上を経ても政争の具として扱われました。最高裁に憲法違反状態だと指摘されている一票の格差是正も、国会議員自らが身を切るための定数削減の議論も、遅々として進みませんでした。政治が「大局」を見失い、「政局」ばかりを優先させてしまう絶望的な状況を放置することはできません。もし解散を決めるならば、それを梃子にして、この動かない政治を少しでも動かすことが私の果たすべき使命ではないか。私はひとり静かに覚悟を決め、自民党の安倍晋三総裁と乾坤一擲の真剣勝負に臨んだのです。

議員辞職も考えた

 ――内閣総理大臣に就任して四百五十日。その間、どんな想い、覚悟で務めて来られたのでしょう。

 野田 決して楽な道のりではなく、日々、何かを試され続ける茨の道でした。内閣総理大臣は、政治が進むべき道を決める最終責任者です。私の後ろには誰もいません。常に一人で決断することが求められる。国論を二分するような課題の数々を前にして、何かを決断すれば、必ず批判を受ける宿命にあります。決断をしない理由を並べようとすれば、いくらでも見つけられます。しかし、決めるべき時に物事を決めなければ、国民の真の利益は守れません。辛くても、苦しくても、歯を食いしばって、厳しい決断を繰り返さなければなりませんでした。解散は、私が下してきたそうした決断の数々の中でも、最も重いものです。

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source : 文藝春秋 2013年01月号

genre : ニュース 政治 経済