アンドルー・C・スコット著、矢野真千子訳「山火事と地球の進化」

文藝春秋BOOK倶楽部

片山 杜秀 評論家
エンタメ 読書

正しく怖れましょう

 今日、世界の至るところで、森がしょっちゅう広範囲に燃えている。人間が環境を痛めつけてきたせいで温暖化や乾燥が進み、さらに人為的に火を付けてしまうがゆえに、火事が大規模化しているのか。

 いやいやと、植物学者である著者は言う。植物は燃えるのが当たり前。人間のいない遥かな太古から、落雷や火山噴火のせいで燃えていた。森林や草原とは、その土地で起きうる火事の頻度や規模を織り込んで出来上がってきている。そういう長い歴史がある。人間の時代になっても、森林火災の主要な原因は、依然として、人為よりもまずは落雷だろう。自然が発火させ、降雨等によって自然に鎮火する。地球の営みだ。

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source : 文藝春秋 2023年2月号

genre : エンタメ 読書